2部分:第二章
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第二章
「西瓜を使ってだ」
「西瓜をですか」
「丁度防衛省からもまた依頼が来ておるな」
「来てませんよ」
素直に答える健次だった。部屋の中は絨毯が敷かれ昼だというのにいささか暗い。健次はその部屋の真ん中のところに立って博士に対しているのである。
「それは」
「なら押し付けるまでよ」
こう言う博士であった。
「私の研究をな」
「またですか」
「私は天才だ」
急にこんなことも言い出してきた。
「その私が研究、開発したものをまた防衛省にくれてやるのだ。有り難いことだ」
「防衛省も困ってるみたいですね」
「私の才能の前にな」
博士はポジティブシンキングであった。それもかなりの。
「困惑しているのだな」
「確かに困惑していますね」
「ならばもっと困惑させてやろう」
満面に笑みを浮かべての言葉である。何故か非常に邪悪な笑みに見える。
「これからだ」
「これから?」
「あっと驚く兵器を作ってみせる」
こうも言うのであった。
「それでだ」
「それで?」
「西瓜だが」
話がそこに戻った。いきなりである。
「よいか、それは」
「何かわからないですけれど西瓜を食べたいんですか?」
「まあ食べるんなら切りますよ」
健次は何となく博士に返した。
「デザートに」
「そうじゃな。今日のデザートはそれじゃな」
「じゃあそういうことで」
「よし、それではじゃ」
博士はその邪悪にしか見えない笑みでさらに言ってきた。
「その西瓜を使ってじゃ」
「何かデザートでも作るんですか?博士料理は」
「兵器を作る」
そうするというのである。
「兵器をじゃ。よいな」
「西瓜で兵器を?」
「世の中には生物兵器というものがある」
いきなり非人道的な話をしてきた。
「それは知っておるな」
「自衛隊そういう兵器はお断りですけれど」
健次は醒めた目で博士に告げた。
「化学兵器も細菌兵器も核兵器も」
「けしからんことじゃ」
「というか自衛隊には必要ないんじゃ」
「そんなことだからあそこまでの質を持ちながら二流なのじゃ」
自衛隊の兵器をこう言って酷評するのだった。
「全くもってけしからん」
「左様じゃ。それでじゃ」
「それで?」
「そんなことは無視する」
実に強引極まる言葉である。
「防衛省の腑抜け共の甘い考えはな」
「政治家も企業もですけれど」
「ではどちらも無視してやる」
「無視したら誰も受けてくれませんよ」
「そのまま強引に押し付けるまでだ」
何処までも自己中心的な人物である。ある意味一途である。
「全くじゃ」
「全くですか」
「そうじゃ。けしからん」
こう言ってである。さらに言う言葉はだ。
「それでじゃ。そんな下らぬ戯言は一切無視してじゃ」
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