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西瓜
1部分:第一章
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うにもならないな」
 こう話をするのであった。彼等も頭を抱えていた。その博士の研究所は鎌倉にある。海が見える断崖はかつては自殺の名所であった。
 浮かばれぬ亡霊達の呻き声が聞こえてきそうなその断崖の上に不気味な古城が立っている。吸血鬼が棲んでいてもおかしくはない。
 その城に博士はいる。より付く者はいない。何やら不気味な雰囲気を漂わせたその西洋風の城の中に博士はいた。何とこの城が研究所なのだ。
 その彼がだ。今何かを考えていた。城の自分の部屋から海を見ながら言うのであった。
「決めた」
「決めたって何をですか?」
 助手に雇われている若い青年が彼に問うた。大学を卒業したばかりと思われる精悍な顔をしている。しかしその顔が今は曇っている。
「今度は何をするんですか?」
「若宮君」
 その青年若宮健次に顔を向けて問う博士だった。
「君は西瓜は好きか」
「好きですけれど」
 その問いには素直に答える健次だった。
「それが何か」
「そうか、わかった」
 それを聞いて静かに頷く博士であった。
「それではだ」
「それでは?」
「これから研究をする」
 こう言ってきたのである。

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