5/21東おそワンライ
[2]次話
日光が完全に遮断された薄暗いアパートの一室。部屋では壮年の男とまだ青年と呼べる歳であろう男が肩を並べて座っていた。
「…おじさん、なんでクスリやめないの…?」
若い男がそう言うと、おじさんと呼ばれた壮年の男、東郷は目を細めた。
「あ?てめェ…」
東郷は荒々しく立ち上がって、背丈の低い机の上に置いてあったガラスのコップを若い男の後ろの壁に叩きつけた。
ガシャンという音が部屋に響いて、若い男はもう聞きたくないというように手で耳を覆った。
「なんで、だァ!?おそ松、お前おれのことをナメてんのか、あァ!?」
東郷は容赦なくおそ松と呼ばれた青年の髪を掴んで自分の目線まで持ち上げる。おそ松の顔は苦痛に歪んでいて、今にも泣き出しそうだったが、決して怒りは感じられなかった。
「おれァヤクにハマりたくて密売始めた訳じゃねんだよ!お前と暮らす為に金が必要だったんじゃねェか!違うか!?あァ!?」
東郷は言い終わるとおそ松の頭を壁に向かって放った。おそ松の体は力なく連れ去られていき、大きな音をたてて壁に激突した。
「ぅ、げほっ…が、っ…!」
壁に激突した衝撃で激しくむせかえり、頭を押さえてうずくまった。
「お前の為だったんだ、松野家に下宿人として乗り込んで、誘拐してきて…生活に困らないように金もやってるだろ!その金もヤク中のおれが稼いだ金だ…合法じゃァねェが、そこらのサラリーマンなんかよりずっとあるぜ?」
東郷は頭を抱えて横たわったおそ松の腹を蹴って、高く笑う。まるで馬鹿にするような声で。
「はははははははは…お前、最高にかわいいよ、その顔…すげェそそる」
「いやっ、だ…!ぐっ、う…!」
涙と鼻水でグチャグチャになったおそ松の顔に、東郷は嬉々とした表情を向ける。
「いいか?お前はおれの管理下にあるんだ。一人だからって油断するな、おれはお前を見てる。一生安心なんてさせてやらねぇよ、クソガキ」
スッと手がおそ松の首へのびて、ギリギリと締め上げていく。
「ぁ、っ」
く、と詰まった息を解放してやると、酸素を吸い込もうと体が焦って余計に苦しかった。
「…いつかおれが殺してやるよ…待ってろ、おそ松」
「あ、ぁっ…!いゃ、ぅっ…」
いつか土管の中で泣かせた子供のように、その涙は透き通っていた。
「逃げようなんて思うな」
おそ松は白んでいく視界から、自分と東郷の姿を消した。
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