三国一の傾城 〜小さいおじさんシリーズ6
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わせて瘧のように震え始めた。
「貂蝉、貂蝉!?何を怯えている!?」
いや、お前に怯えてるんだろうどう考えても。
「貴っ様らかあぁぁああ!!」
えっどうして?
「呂布殿、その男たちが、貂蝉を!!」
白頭巾が他の二人を羽扇で指し示しながら怒鳴った。呂布は無言で赤兎馬ごと、彼らに向き直る。
「貴様らが…貂蝉を…」
―――すっげぇ、言ったもん勝ちだなぁ。
「なっ、貴様何を!!」
「卿、自分が何やったかわかっているのか、これ洒落にならんぞ!!」
云い終わるや否や、二人は弾かれたように走り始めた。呂布が物凄い勢いで拍車をかけはじめたからだ。二手に分かれて走る豪勢と端正。呂布はひとまず、端正に目をつけたようだ。迫る馬蹄の響き、恐怖にひきつる端正の美貌。次々と繰り出される高速の突きを紙一重でかわしながら、端正は怒鳴るように叫んだ。
「ご、誤解だ!」
「なにが誤解だぁああああ!!」
「とっ…董卓、董卓だ!!」
槍が、ぴたりと止まる。
「私たちは、董卓からあの方をお助けしたのだ!!」
「うぉのれぇ董卓うううう!!!!!」
―――まじで言ったもん勝ちだなぁ。
竜巻のような旋回で手綱を返すと、呂布は怒髪天を衝く勢いで咆哮した。
「何処だぁ!!何処にいる!!!」
ほんとに何処だよ。こんなのに付き合わされる赤兎馬もな…もうな…。白頭巾はあっという間に平時の落ち着きを取り戻し、羽扇を軽く口元にあてた。…こいつ、いつか死なない程度に痛い目をみればいいのに。
「貴様…本当にいい加減にしろよ…人死にが出るところだったわい」
豪勢が肩で荒い息をしながら戻ってきた。…いつも思うのだが、こいつは生か死かを分ける二択になるとめっぽう強い。簡単に言うと、極端に運がいい。これも天稟というやつなのだろうか?
「まったくだ。…我々も悪ふざけが過ぎたが」
端正も戻ってきた。…こいつは運には恵まれていないが、意外と根性とか機転とかで生き延びる。他の二人と一緒にいるから割を食うことが多いが、本当はすごく優秀な将なのだろう。
「卿も一国の丞相だろうが。美女くらい克服できなかったのか」
「…私は、このように理不尽な状況が大嫌いなのですよ」
白頭巾が、怯える貂蝉と馬蹄を響かせ走り回る呂布を羽扇で示した。
「一人の傾城を巡り、一国の主たる器の持ち主たちが惑い、判断を誤り、人生をかけて積み上げたものを一瞬で失い、破滅へと堕ちていく。…その美しさは永遠ではないし、見世物にでもする以外は経済的な価値もない。頭ではわかっているのに、胸をかき乱されるこの理不尽」
「僥倖ではないか!国を傾けるほどの美女と巡り会えるなど!そんな状況を楽しめぬから、貴様の私生活はパッとせんのだ」
「これは正に、卿の言う通りだ。その危ういところをうまいこと手綱をと
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