32話 特務 3.7
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私たちの事業の最初で最後の楔を貴方に譲ろうと思うの。存分に見極めてやって欲しいわ」
邪悪な巨魁が2人。マ・クベはいつもの無表情でため息を付いて、無言の同意をした。
人生の終幕は成り行きを見守るだけなマ・クベにとって、もうどうでも良いことだった。
* ダカール市 連邦議会議事堂 西側通路 3.10
ブレックスは秘書と共に赤い絨毯の上を予算委員会室へ向けて歩いていた。
本議会の前にこなす議題が山ほどあった。本議会での議決は既に出来レースであり、
それまでの調整をするのが予算委員会だった。
予算委員会はその名の通り各省庁への予算について議論するのだが、それは多岐に渡る。
議員のスキャンダルや紛争、災害等、結果お金に関わると目されるもの全てが予算と都合付けられてしまうためで、実質の議会とはこの予算委員会にあった。
ブレックスが歩いていると先の角でガルマと出くわした。
「おお、ガルマ君」
「ブレックスさん、ご無事で」
両者とも握手を交わす。ガルマの隣には妻であり秘書のイセリナが控えていた。
「互いにここまで来るに苦労したでしょう」
「全くです。私は宇宙からの帰りで民間シャトルでの政府特権で何とか到着できました」
ガルマは軍服姿でなく背広を着ている。イセリナはパンツスーツだった。夫婦共に紺や濃紺というシックな服装だった。
「ガルマ君、以前我々の議席数で反対を通そうにもままならない。この予算委員会でどれだけ危険を訴えることができるかが重要だ。中立層を我々で動かさねば」
「仰る通りです。前回の議会でも何とか中立層の支持を得られてティターンズの肝いりの法案を退けることに成功できました。今回もそれでいければと・・・」
ガルマはそう言い切ると浮かない顔をしていた。イセリナも心配そうに見ている。ブレックスもその歯切れの悪さに質問した。
「どうしたのだガルマ君」
「いえ、この度はマスコミの情報が不利を報じています。前回は五分と言っていました。あの手の世論は中々どうしてかよく当たります」
ガルマは現実主義者だった。この7年間で培ったノウハウは彼を成熟させると共に若さという熱さを棄ててしまっていた。何か既に見えている雰囲気を出していた。
ブレックスはそんなガルマの姿を見て、一息付いてガルマの背中を叩いた。
「・・ゲホッ・・・」
「ガルマ君!私の様な老体がこんなに励んでいるのに何たる体たらくだ」
「・・・すみません」
ガルマが謝るとブレックスが腕をガルマの肩に回して耳に囁いた。
「長年の勘でね・・・。こんな窮地には何らかの突破口があるもんだ」
「?・・・勘ですか?」
「そうだ。伊達に君より長く生きていないさ。この空気、雰囲気を君は
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