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逆さの砂時計
Side Story
少女怪盗と仮面の神父 15
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が来るまでの間に海賊との縁を切る方法を考案、実行する……シャムロックのそんな願いは叶わない。
 『依頼』は多分、失敗した。
 (だから諦める? 冗談でしょ? まだ二日も残ってる。考えなきゃ。指輪を探す方法を。指輪が無くてもハウィス達を護れる方法を。それができるのは私だけ。私にしかできないんだから、私がやるしかない!)
 汗が滲む手でバッグの持ち手を強く握り締めた。これも、もう使えなくなるなと自嘲で口元を歪ませて……立ち止まる。
 「……神父様?」
 気付けば隣に並んでいたアーレストが、果樹園へ続く坂道をじぃっと見上げている。目線の先を追い掛けてみても、其処にあるのは風に揺れる木々の葉だけ。
 「この先がミートリッテさんの職場ですか?」
 「ええ、そうです。マーマレードと完熟させた果実がお薦めな、オレンジの農園ですよ」
 「……なるほど」
 何に納得したのか、険しかった表情がふわりと和らぐ。
 「空も随分黒くなってきましたし、急ぎましょうか。帰りは勿論お送りしますので、もう少しお付き合いください」
 「それは構いませんが」
 にこっと笑って歩き出すアーレストに付いて自警団員二人の間を通り抜け、住宅区へ入る。
 今日は女衆に取り囲まれる事も無く、村人達の足音すら聞こえない。
 みんな、大人しく帰宅しているようだ。
 「この造りは、総てのご家庭から海を望めるように……との配慮でしょうか」
 「はい。一人暮らしだとそりゃもう贅沢ですよ。絶景を堂々と独り占めですからね。教会から眺める海には劣りますけど」
 「ふふ。外門から見る村の様子も圧巻ですよ。住み慣れるには少々時間を要しますが」
 海へ向かう傾斜な土地で、チェッカー柄のように配置された全戸木造二階建て家屋の群れ。
 その隙間を縫って中央広場まで出ると、砂浜への階段脇に武装した自警団員が二人、間隔を空けて立っていた。少し離れた右側にある、開店したばかりの酒場前にも一人。
 同じく左側にある村長の家の前には誰も居ない。屋内で待機中か。
 「砂浜と通じているのは、この階段だけですか?」
 「いえ。船着き場の近くに水揚げされた魚を一時保管する施設があって、その手前に搬入用の小道が作られてます。舗装はされてませんが」
 「ああ、あの大きな倉庫ですね」
 夜目が利くのだろうか。
 ついさっきまでの赤い陽光はあっという間に海没し、遠く離れた船着き場の辺りは暗くてはっきり見えない。それでもアーレストが見つめる先には、確かに保管施設が設置されている。
 「住宅区より東側は、漁業関係の仕事場しかありませんけど……行ってみますか?」
 国のど真ん中、内陸部に位置する王都には当然、漁業なんか無い。
 興味があるならと尋いてみたが、彼は首を横に振った。
 「此処までで十分です。あり
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