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逆さの砂時計
Side Story
少女怪盗と仮面の神父 15
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の目線が集まれば、冴えない自分を嫌でも自覚させられて地味に悲しくなりそうだ。元々、己の外見に手入れするほどの拘りは無いが。
 しかし。
 「……ありがとうございます」
 ミートリッテが自己嫌悪に陥る前に、何故かアーレストのほうが少しだけ残念そうに肩を落として微笑んだ。
 (? 普通に誉めたつもりだけど、適当に流されたとでも思ったのかしら? 私の反応が不満なら尋かなきゃ良かったのに。私からの好感度が激低で、わざと愛想悪くされてる事くらい分かって……なかったりして。そういうの気にする性格じゃなさそうだしなぁ)
 寂しそうにも拗ねているようにも見える横顔に首を捻りつつ、普段は開きっ放しの門扉にも施錠したアーレストと隣同士、青紫とオレンジが混ざる夕焼け色の坂道を同じ速度で下る。
 菜園までの一本道、人影は一つも無かった。その代わり、菜園の周辺では教会方面に二人、果樹園方面に二人、住宅区方面に二人、村の入口方面に二人、計八人の武装した自警団員が、それぞれの様子を窺うように立っている。どうやら巡回を無事に終えて、各自指定位置に就いたらしい。
 (此処に八人か。二人一組で交通の要所を張ってるなら、村の入口側でも六人から八人は置いてそうだけど……中央広場周辺と船着き場周辺はどうなってるんだろ。自警団員なんて、休みと交代返上で全員引っ張って来ても精々三十人くらいしかいないのに)
 海賊相手はさすがに緊張するのか、此方から気軽に声を掛けられる雰囲気じゃないので、相手が振り返った時に「お疲れ様」と挨拶して脇を通り抜ける。
 「……見事な菜園ですね。作物は総て、村外への商品なのですか?」
 「近辺の村や町との商会協定で出荷制限が掛けられているので、全部ではないです。三割程度は村人にも格安で売ってくれますよ。ちなみに、此処の畑では主に葉物を育ててます。あっちの、今下りてきた坂道の近くでは芋等の根菜類。もう少し先の果樹園近くでは、トマト等背が高くなる物を中心に植えてますね」
 「なるほど。土地の高低差を利用した陽当たりと風通し、水と土の関係を重視する設計でしょうか」
 「みたいですよ。……なんて、私は果樹園で働かせてもらってますが、実の所野菜についてはよく解ってないんです。村のお婆ちゃん達が頑張って育ててるなーって、道すがら横目に眺める程度なので。神父様は栽培に詳しいんですか?」
 「いいえ。ただ、植物にも適度な光や水や風通しが必要でしょう? 見た目に全体を気遣っていると感じたので、多分そうではないかと思ったのです」
 「へぇ……」
 (畑仕事とはあんまり縁が無さそうな王都から来た人間でも、植物に理解はあるんだ。意外ね。南方領の大きな街に住む人達だって、大半は買って済ますか小鉢で生けてる程度なのに)
 「それに、ネアウィック村は総じて音が心地好い。必要以
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