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艦隊これくしょん【幻の特務艦】
第五話 私の存在意義
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に行くと小さな広場があって、そこで毎年『鎮守府さくら祭り』を開催するんです。」
「楽しそうですね。こんな素敵な場所を教えてくださって、ありがとうございます。」
「いいえ、あ、そうだ。」
榛名は何か思いついたように両手を組み合わせた。
「私たちは毎年何かしら出し物をするんですけれど、紀伊さんもよろしければ一緒にどうですか?」
もう一度深呼吸しようとしていた紀伊は危うく桜の花びらを飲み込むところだった。
「ええっ!!わわ、私がですか!?」
「ええ!」
「わ、私はいいかな・・・・。」
「どうしてですか?」
「だって・・・・私なんか何もできないですし・・・・。」
風船がしぼむように充実した気分が消えていった。自分には何一つ誇れるものがない。料理だって今まで食べるだけで作ったこともないし、何か作れと言われても、何を作っていいかわからないし、出し物をしろと言っても何もできない。そう思い始めると急に自分がみじめにおもえてきた。
「そんなことないですよ。一緒にやってみませんか?もちろん今すぐ返事をいただかなくても結構ですし、無理にとはいいませんけれど、でも、やればきっと楽しいと思うんです。」
「・・・・少し、考えさせてもらってもいいですか?ごめんなさい、即答できなくて。」
「いいえ。でも・・・わがままかもしれませんけれど・・・・私、紀伊さんと一緒にやってみたいんです。だから、待っていますね。」
「榛名さん・・・・。」
自分を直向に見つめて受け入れてくれる榛名が紀伊には眩しかった。

執務室にて。提督のモノローグ――。
 紀伊の奴が榛名と一緒に来た。いつも第七艦隊の報告は榛名の奴がしにくるんで珍しいなと思っていたら、案の定だ。第七艦隊の連中は敵前衛艦隊だけでなく、敵の機動部隊とも会敵してこれを撃破したらしい。その殊勲艦娘は紀伊の奴だったというから驚きだ。奴は軽巡、軽空母、正規空母を撃沈し、艦載機を多数撃破したらしい。それだけではなく、最初に敵の意図を察知して的確に動いたのも奴だったというからまたまた驚いた。あんまり驚いたんで椅子からひっくり返りそうになったくらいだ。これで2戦2勝。自信が全くないといっていた割にこの戦果はなんなんだ。
 だが、奴は相変わらずさえない顔だった。榛名がしきりに紀伊をベタぼめしているのに、奴は「たまたまです。まぐれです。榛名さんや瑞鶴さん、皆さんのおかげでした。私は何もできませんでした。本当です。」と、全力でこれを否定してきた。どんだけ謙虚、いや、謙虚じゃないな。これはネガティブ思考というやつだ。ここまでネガティブな奴を俺は見たことがない。ないが、それでも最初と比べて奴も変わってきたと思う。前はあまりの緊張ぶりに震え上がって真っ青になり今にも倒れそうだったものだが、今は曲がりなりにも受け答えはしっかりしてきてい
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