第十一話 嵐の中でその六
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「お父さんとお母さんに言われたの」
「そうだったんだ」
「優花がまだ物心つかないね、私がまだ学生だった頃に」
まさにその時にというのだ。
「中学生だったかしら、その時にね」
「お父さんとお母さんに言われたんだ」
「そう、そのことは大事だって。そしてね」
遠い目になっていた、その遠くにあるものは今この場にはないがそれでも優子の目には確かに見えていた。
「太宰の本も読んで」
「余計にだね」
「わかったの」
「人は弱いけれど」
「弱いからこそなのよ」
「そこから優しくなれるし」
「強くなれるって」
「そう言われて」
優花も自分の両親のことを思い出した、既にいない彼等のことを。
そしてだ、そのうえで言うのだった。
「そうだったんだね」
「ええ、そうだったの」
「お父さんとお母さんからだったんだ」
「優花には言ってないわね」
「この話はじめて聞いたよ」
「そうよね、優花にも教える前にね」
「二人共死んだんだね」
ここで俯いた優花だった、両親が共に事故で死んでその時は泣いた、涙が止まらなかったことも思い出した。
「僕にも言う前に」
「そうよ」
「そして僕は姉さんに教えてもらったんだね」
「そうなるわね、そして今は」
その優花を見つつだ、優子は言った。
「優花に思い出せてもらったわ」
「そうなったんだね」
「そうね、弱いことは悪いことでもね」
「駄目でもないよね」
「一番大事なことは」
そのことがだ、優子もわかった。今この時に。
「どうするか決めてどう動くか」
「そのことだね、じゃあ僕も」
「決めるのね」
「そして動くよ」
「龍馬君にも」
「どう考えても龍馬は信用出来るよ」
龍馬へについてはもうはっきりとだ、わかっていた。
「それじゃあ」
「言ってもね」
「うん、僕を見捨てたり裏切ったりしないよ」
「人を見てね」
こうも言った優子だった。
「どんな人かを理解することもね」
「大事だよね」
「そうよ、悪い人は確かにいるけれど」
「いい人もいるね」
「絶対に信じてはいけない人もいるわ」
世の中にはそうした輩もいる、優子はこのことも弟に言ったのだ。
「けれどね」
「信じるべき人もいるね」
「そして龍馬君はね」
「信じるべき人だよね」
「間違いなくね」
「そうだよね、じゃあどうするにしても」
「龍馬君は信じるべきよ」
「うん、僕は龍馬を信じるよ」
優花も確かな顔で言った。
「絶対に」
「それじゃあ」
「答え出てるかな」
優花は気付いた、勿論優子も。
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