第十一話 嵐の中でその三
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「独創性やそうしたものはないわ」
「芸術に必要な」
「それぞれなのよ、芸術は」
またこう言ったのだった、優花に。
「だから縛ってはいけないの」
「絶対にですか」
「芽は育てるものでしょ」
微笑んでだ、優花は言った。
「それものびのびとね」
「じゃあ僕達にも」
「縛ってはいないの」
「そう指導してくれてるんですね」
「そうしてるのよ」
まさにというのだ、そうした話をしてだった。
優花のその絵を見てだ、あらためて言った。
「白が一番増えてるわね」
「今の僕は」
「そう、その色がね」
まさにというのだ。
「赤や黄色よりも」
「そういえば」
優花も言われて気付いて言った。
「そうですね」
「明るい色の中でもね」
「白が多いですね」
「白は光よ」
先生は優花ににこりと笑って話した。
「光そのものの色よ」
「先生いつも仰ってますね」
「そう、白はね」
まさにというのだ。
「光でね」
「その色を使うことは」
「明るさそのものなのよ」
まさにというのだ。
「心に明るさがあるとね」
「その光が、ですね」
「あるということなのよ」
「そういうことですよね」
「絵は描く人の心、観ているものまで出てね」
「僕は、ですね」
「今は光もね」
白、まさにそれがというのだ。
「見えてきているのよ」
「心にもですね」
「そうなのよ」
「そうですか、だからなんですね」
「白が多くなってきているのよ」
「そうなんですね、絵にも出ているんですね」
見れば確かにだった、優花の絵は。
描いている彼自身が見てもだ、まだ黒が多いが。
白が目立ってきていた、それで言うのだった。
「確かにそうですね」
「そうよね」
「僕の心が」
「暗くなっているのは今もよね」
「はい」
「ただ、今はね」
「徐々にでも」
また自分から言った優花だった。
「明るくなっていっているんですね」
「確かにね」
「そうなんですね」
「黒も悪くはないわ、けれどね」
「白もですね」
「悪くないのよ」
その色もというのだ。
「人は色々な感情があるから、ただ」
「光が増えていることは」
「明るいことはね」
「いいんですね」
「そのこともね」
「そうですか、じゃあこの絵は描いていきますね」
「絶対にね」
先生の言葉は締まったものになった、それは描いていっている優花にとって強く言うものだった。それもかなり強く。
「絵が完成させるものよ」
「未完成はよくないですね」
「作品は作りはじめたらね」
その時はというのだ。
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