4部分:第四章
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第四章
それを前に出されてであった。独裁者はまた言った。
「相変わらずの量だな」
「御願いします」
「今日もまた」
「休みなしか」
あらためて話す彼だった。
「それも相変わらずだな」
「仕事は消えませんので」
「病気と同じく」
「全く。これが終わったらだ」
早速書類にサインをしながら話す。
「引退すればだが」
「引退されるのですか」
「最後までやられるのではないのですか」
「全ての権限を持っているのも疲れるのだ」
独裁者もそうそう楽ではないというのだ。
「そのうち引退してだ」
「そして」
「どうされると」
「この国もかなり落ち着いてきた」
彼が今度言ったのはこうしたことだった。
「だから後はだ」
「後は」
「それは一体」
「国民達に任せていいだろう」
つまり独裁政権はこれで終わりだというのである。
「もうな」
「そうされるのですか」
「引退されたら」
「そうする。ただしだ」
ここでまた独裁者の顔が引き締まった。そうしてそのうえで言うのだった。
「この病気のことはだ」
「それは決してですね」
「真実は公にはしないと」
「それは申し継いでおくことだ」
どうしてもだというのだ。このことはである。
「さもないと我が国だけでなく周辺各国もパニック状態になるとな」
「はい、そうですね」
「そのことは確かに」
そうした病気が存在しているとわかればどういうことになるか、それは新型のインフルエンザが流行する度に世界中が混乱に陥っていることから明らかであった。もう言うまでもないことだった。
「ではそのことは」
「しっかりと申し継ぎをして」
「公に出していいものとよくないものがある」
独裁者はまた言った。
「民主政権であろうとなかろうとな」
「国家の為に」
「ひいては国民の為にですね」
側近達は彼のその言葉に頷いた。こうしてこの病気の真実は永遠にこの国のトップシークレットとなった。それで話は終わりだった。真実は公には言われないまま。
狂人の村 完
2010・2・10
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