恐怖の少年
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いかという程素早く残像を残し、巨大なハンドベルは元あった場所へと戻った。
まるで壁に叩きつけられたかのように、また、安全システムが急に発生したハンドルのようにピタリと止まり、低く、ビブラートの発生した巨大な音域を周囲にドーム状に一度、発生させた。音域が広がり、ミサイルを通り過ぎた時、ミサイルはその場に数秒留まり、くしゃりと歪み、その場で爆発した。
上空にいる人間達は、ソーラーパネルの面を緑色にさせたようなものを展開し、音圧からの攻撃を耐えているようだ。
不思議に思っていると、後方、空間震で抉れた地面の上から、人の気配がする。
丁度先程音が虚空へと消えたところだ。
「誰?」
充血した瞳を人の気配のする方へ向ける。
そこには、青く癖の強い髪と、そこから覗く茶色の目をした青年が、学生服らしき服を着て、肩で息をしていた。
花音が聞いてみるも、答えは聞こえてこない。まぁ、当たり前といっちゃ当たり前だが。近い距離でもないし、元から大声とはかけ離れた声と、泣いて枯れた喉で届く訳がない。
男は右耳に手を当て、口をパクパクさせ、ひとしきり喋り(?)終えると、何を思ったか、二人はこちらに歩み寄ってきた。花音はほぼ無意識的に立ち上がり、後ずさりを始める。
「落ちついてくれ!俺は見方だ!」
男が声を上げる。
しかし、それを信じろという方が馬鹿げている。見方だという証拠が何処にある?
――――そう言われて何度裏切られた?
忌々しい記憶が脳裏をよぎる。
近寄って来る男に、目を白黒させる。
「音銃」
ふるふると震える手を上に上げると、上空にいたベルの状態を保っていた天使が五線譜で姿を隠す。そして、そこから現れた通常サイズのトランペットに酷似した状態に変化した天使がバトンのように回転しながら花音の手に収まる。
「待ってくれ!話だけでも聞いてくれ!」
男がやけに慣れたといった声を上げながら大げさな素振りを見せる。
「やめ、て。来ない、で」
恐怖に泣きだしそうになった心をなんとか抑え、小さな声を上げる。
「近寄らなければ大丈夫か?」
言って男はピタリと足を止める。それに花音が小刻みに頷く。
「俺は五河士道だ。敵じゃない」
その場に止まった男、五河士道が名乗る。
「花音、小鳥遊花音
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