恐怖の少年
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ばかりの大声を上げる。能力の殆どを封印されている為、十香もそれ以外の選択肢が無いことに気づいたのだろう、少し渋った顔をした。
「シドー、気をつけるのだぞ」
自分の意思を押し殺すように握り拳を作った十香が、既に目と鼻の先にある家に入り、四糸乃と『よしのん』を連れだす。
『士道、すぐ回収するわよ』
反射的に耳に取りつけていたインカムから、妹・琴里の可愛らしい声が聞こえる。それに、あぁ、と答えると、奇妙な、ジェットコースターで急降下するようなあの浮遊感が全身を襲った。
天宮市の来禅高校から少し離れた商店街に、警報を鳴らした正体がいた。
身長位はあるのではないかという程長く美しい白銀の髪、顔は俯いていて分からない。しかし、服は男性アイドルユニットが着るような、かっこよくも可愛い黒色の服であった。所々には、白いウネのようなものが描かれているその服は、少し、というか、泣いている心情とは全くと言っていい程別物だった。
そんな容姿を持った花音は、しくしくと泣いていた。
周囲をグシャグシャにしたからか?
クレーターみたいに地面を抉ったからか?
トラウマが甦ったからか?
否、全て違う。
単に、悲しいのだ。
普通に生活していると、時折突発的に起こる力の暴走で、毎回独りになってしまう。
充血した目で空を見上げると、5人程の人間が、機械を纏って空中に浮遊していた。手に持っている銃は、冬香を殺すのには足りるだろう。肩と足に付けられたミサイルパッチのようなものも持ち、明らかに殺す気満々だ。
「来ないで・・・怪我させるのは、嫌、だから」
蚊が鳴くような小さな声を発し、右手を上空に向け、顔を俯かせる。
しかし、その思いは届かず、上空から幾つものミサイルが細い煙の軌跡を描きながら、花音目がけて発射される。
「なんで、なの?酷い、よ」
時々しゃっくり混じりの声がいうと、冬香の後方、上空に幾つもの音符が取りつけられた五線譜が現れる。
「〈創音竜〉青銅鐘、広域曲」
五線譜が蛇が散るように周囲へと散り、空に消えると同時に、そこには、攻撃するとは思えないものが現れた。巨大はハンドベルだ。教会の鐘にも似た装飾が施されているが、持ち手はある。例えるのであれば、画像のハンドベルをそのまま巨大化させたようなものだ。
正体は、天使だ。
精霊を精霊たらしめる絶対の矛。
形を持った奇跡。
――――――天使――――――
花音の天使、創音竜は、下げていた振り子がゆっくりと、時間をかけて上がる。かと思えば、ハンドルと振り子が丁度正反対に達した頃、がん!と音がするのではな
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