恐怖の少年
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五月の中頃、雨こそ降っているものの、突飛な雨は最近減って来ている。勿論0ではないが、それも少なくなったのは違いない。
「シドー!一緒に帰るぞ!」
カバンを持ちあげ、ふと周りを見渡した時、膝まであろうかという長く美しい夜色の髪と、そこから覗かせる水晶の如き双眸を携えた美少女、夜刀神十香がグイグイと近寄って来る。
「駄目。士道は私と帰ると約束している」
十香がぐいぐいと教室の扉に連れて行こうとすると、図ったようなタイミングで人形のような少女が左手を掴む。肩をくすぐる程度の美しい白銀の髪に、人形のような顔が特徴的な、鳶一折紙だ。
「ぬ。私は朝に約束しているのだ!」
「私は前日から約束していた」
「いや、それは・・・」
流石に無いだろうと言おうとしたが、何故か折紙さんが恐ろしい目を士道に向けていて、続けることが出来なかった。
十香がぐぬぬぬと悔しそうに声を上げる。
「あぁもう!3人で帰ればいいだろ!」
士道が耐え兼ね、周りを気にせず大声を上げる。
二人とも、成程、と声を上げ理解してくれたようだ。
学校から出る時には、雨はもう上がり、雲は赤く染まる空を見せるように姿を隠した。
「通り雨だったか?」
士道がそんなことを考える。しかし、少し辺りを見渡すと、電線に停まっていた10羽程の烏が何かから逃げるように同じ方向へ飛び立ち、鳴いている。アニメであれば、この後すぐに、非現実の世界に入るといったところか。
そう考えると、自然と恐ろしく感じる。
気づけば、胸騒ぎがしていた。何か起こるのではないか、と。もしかしたら、アニメの見過ぎかもしれないが。
―――――ウウウウウウウウウゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥン
そんな時に、街中に設置されたスピーカーからけたたましいサイレン音が鳴り響く。このサイレンが鳴る時に起こる災害は、世界共通で、たった1つしかない。
「空間震警報」
隣にいた折紙がポツリと回答を呟いた。
空間震、空間の地震と称される突発的に発生する災害だ。発生原因不明。街がまるで、大怪獣が暴れまわったかのような凄惨な光景となる迷惑極まりない災害だ。
サイレンが鳴り終わり、次いで女性の避難を促す声がスピーカーから響く。
それに気を取られていると、左にいた折紙が姿を暗ましていた。
「精霊か」
士道が呟く。
精霊、この空間震を発生させる原因、特殊災害指定生命体の通称だ。圧倒的な力を持つ為、人間の天敵、世界の災厄と言われている存在だ。
「シドー!私はどうすればいい!?」
隣にいた十香が大声を上げる。彼女もまた、精霊である。同種が人間に狙われるのが嫌なんだろう。
「四糸乃とよしのんと一緒に避難してくれ!」
士道が彼女に負けん
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