巻ノ四十二 大谷吉継その十三
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「これまで妻を迎えることについては」
「考えてこなかったと」
「そうではありませんが」
「強くはですな」
「これまで見聞を広め家臣を集め戦をし」
「上杉家にもおられ」
「そうしたことはです」
その妻を迎えることはというのだ。
「考えてきませんでした」
「考えるにはほかに何かとあってでしたか」
「そうなるでしょうか」
「こうした時は刻限かと」
「考えるべき時が来れば考えるものですか」
「そして得られる時にです」
大谷は幸村に話していく。
「まさにその時にです」
「得られるものですか」
「それがしがそう思いまする」
「そうなのですか」
「そして真田殿にとってはです」
「今ですか」
「そうではないかと」
幸村の目を見つつの言葉だった。
「ではそれがしから関白様にお話し」
「父上にもですか」
「文を送りますので」
「さすれば」
「それでなのですが」
あらためてだ、大谷は幸村に言って来た。
「若しそれがしの娘と夫婦になればそれがしは真田殿の義父になります」
「ですな、確かに」
「即ち羽柴家とも縁が出来まするな」
「では羽柴家と」
「いえ、義を貫かれるべきです」
「義ですか」
「それがしの義は羽柴家にあります」
大谷は己の義もだ、幸村に話した。
「忠義がです」
「それが大谷殿の忠義ですか」
「そして佐吉、つまり石田殿にもです」
「お二人はずっと友人同士でしたな」
「そうです、信義があります」
「石田殿に対しては」
「この二つの義があり」
大谷は穏やかだが確かな声でだ、幸村に話していった。彼のその義を。
「それを守っていくことを考えております」
「忠義、信義ですか」
「主と友に。そして仁義を」
「その義もですか」
「家臣、民達に対して」
「民達ですか」
「天下泰平、それもです」
天下と民達を想う、その心もまた語るのだった。
「大事にしております」
「それが「仁義ですな」
「二つと言いましたが三つになりますか」
「大谷殿の義が」
「はい、しかし真田殿の義は」
己の義を話してからだった、大谷は。
幸村を見据えてだ、強い声で語った。
「それがしの義とはまた違いますな」
「ではどうした義でしょうか」
「上に何も付かぬ大きな」
まさにというのだった。
「義、ですな」
それだと言うのだった、大谷は今幸村自身に彼のその義を話した。
巻ノ四十二 完
2016・1・22
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