巻ノ四十二 大谷吉継その十
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「真田家において義を求めよ」
「それをですな」
「そして天下一の武士になるのじゃ」
「そうさせて頂きます」
「御主ならなれる」
その天下一の武士にというのだ。
「わしにはわかる、御主は天下人になる者ではないがな」
「それでもですか」
「天下一の武士になるものじゃ」
「そうした者ですか」
「器には大きさもありじゃ」
よく言われることだ、器の大きさは人それぞれだ。だが秀吉はその器においてこう言うのだった。
「色や形もそれぞれじゃからな」
「だからですか」
「御主の器は天下人の器ではないのじゃ」
「そうした種類ではなくですか」
「優れた武士になるな」
「そうした器ですか」
「そしてその器が大きい」
武士としてのそれがというのだ。
「わしの天下人としてのそれと同じだけな」
「関白様のものと」
「だからじゃ」
「それがしはですか」
「天下一の武士になるな」
「間違いなく、ですか」
「相当な精進を積んでおるな、ではその鍛錬をさらに続けじゃ」
そのうえでというのだ。
「天下一の武士として名を残せ、よいな」
「さすれば」
「わしが御主に求めるものはそれになった」
まさにというのだ。
「思う存分精進せよ、よいな」
「それでは」
「そしてじゃ」
「そしてとは」
「天下一の武士には必要なものがある」
楽しげに笑みを浮かべてだ、秀吉はこうも言うのだった。
「家臣、武具、馬にな」
「それ等は既にあります」
「しかしじゃ」
「その他にもじゃ」
さらにというのだ。
「もう一つ必要じゃな」
「それは」
「わかったであろう」
「それがしはまだ一人です」
幸村もだ、秀吉の言わんとすることを察して言うのだった。
「だからですな」
「そうじゃ、御主に天下一の女房を用意したいが」
「天下一のですか」
「うむ、どうじゃ」
「その方は」
「後で話がある、わしからは言わぬ」
秀吉のその口からはとだ、ここではこう言った秀吉だった。
「しかし御主にな」
「妻をですか」
「与えよう、そしてよき女房を得てな」
そのうえでというのだ。
「家も得てそのうえでな」
「天下一のですな」
「武士を目指せ、よいな」
「さすれば」
幸村は秀吉の言葉に素直に頷いた、そしてだった。
その彼だけでなく一同にだ、秀吉は言った。
「ではこれでじゃ」
「お話は、ですか」
「終わりじゃ」
まさにというのだ。
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