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思わぬ奇病
5部分:第五章
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せざるを得なかったというのが現実であった。
「まさかとは思ったが」
「そうね」
 ジョンはこの日の朝テーブルで新聞を読んでいた。クリスティがそれに応える。二人の今日の朝食は和食だった。味噌汁にメザシが見える。
「こんなことってあるのね」
「ウィルスはウィルスだった」
 ジョンは言う。新聞から目を離してはいない。
「しかしな。それだけでは何の影響もないなんてな」
「突然変異でそうなったなんてね」
「ああ、全く」
 どうにもわからないといった様子で首を横に振りながら妻に応えた。
「こんなこともあるのか」
「まだ突然変異の原因については調査中だったわね」
「ああ、それはまだだ」
 新聞を読みながら妻に答える。
「それはな。しかしだ」
「とりあえずの原因はわかったのね」 
 こう夫に問うた。
「それでも」
「そうだな。何はともあれ痛風や糖尿病の人がこのウィルスにかかると」
「ああなるのね」
「原因がわかればどうということはない」
 これまでになく素っ気無い言葉だった。今までとは状況が全く異なっていた。
「それさえわかればな」
「それさえなのね」
「ああ、それさえだ」
 こう妻に述べる。
「わかってしまえばどうとでもなる、病気というものはな」
「それで患者さん達は伝染病ではなく痛風や糖尿病の治療を受けているのね」
「ああ、そうだ」
 また妻に答えた。
「今はな。だから俺は助かったのか」
「言ったでしょ。痛風や糖尿病になったら大変だって」
「それはわかるが」
 苦い顔で妻に言葉を返した。
「それでも。これは」
「これは?」
「随分苦しい治療だな」
「あら、そうかしら」
「ビールが飲めなかった」
 まず言うのはこのことだった。
「これが一番辛かったな」
「ワインじゃ不満だったのね」
「好みの問題だからな」
 仕方ないというのだ。酒というものはとりわけ嗜好が出るものだからこれは仕方のないことであった。ジョンも自分でわかっていることはわかっているのだ。
「これについてはな」
「そんなに嫌だったの」
「まあそれでも」
 しかしここで言葉を変えてきた。
「和食とかは悪くなかったな。鶏肉もな」
「そうでしょ?ヘルシーもいいものよ」
 にこりと笑っての夫への返答だった。
「特に今日の御飯はね」
「これか」
「どうかしら、今日のお米は」
 御椀にある米をさして問う。

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