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シバルリー 〜若騎士戦記〜
第1話 シュッツハルトの野にて
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け。まだ治ってないんだ」
「…何が、あった」
頭を抑えながら、ルーカスは問うた。
「脳震盪だ。…君、メイスの打撃をもろに食らっただろう」
ああ、と、思い出したように呟いた。
ネルソンが無言で、兜を放り投げてきた。変に、重く感じられた。
「…アーメットで良かった、本当に」
???アーメットとは、バイザーの付いた開閉式の兜である???
前面は、ほぼ原型を留めていなかった。メイスの打撃によってバイザーが砕かれ、機能しなくなっている。
小さく溜息をついた。
「それで…戦闘はどうなった?」
「…勝ったよ。取り敢えず、な」
ネルソンが答え、静かに語り始めた。
「ルーカス、パトリック、お前らはまだ訓練兵で、若い」
束の間、沈黙が流れた。
「??アガサが今、困窮しているのは分かっている。現に、兵士も足りていない。だが、それをお前らのような若い訓練兵で穴埋めしたくはないんだ」
ルーカスは、兜を見つめた。
「無理を押し切って戦場に出した俺にも責任がある。…だから、暫くは戦闘に参加させられない」
悔しさを噛み殺した様な響きだった。
語り終えた後、誰も、何も言わなかった。
しかしルーカスは、平静の表情の下に、怒りと悔しさを燃やしていた。
砕かれた兜に誓って???。










526年、9月12日、午前4時
アガサ王国領シュッツハルト平野




涼やかな朝風の戦ぐ平野に、二人の若者が黄昏ていた。
耳に掛かる程度の薄い茶髪の若者と、肩に掛かる長さの金髪の若者。
「やっと、だな。…やっと」
「ああ…もう、手は煩わせないよ」
二人は顔を見合わせ、拳を合わせた。
「当たり前だ。3年を、無駄にはしないぞ」
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