暁 〜小説投稿サイト〜
ジェレミー=フィッシャーさんのお話
第一章

[2]次話
                 ジェレミー=フィッシャーさんのお話
 ヒキガエルのジェレミー=フィッシャーさんはお池の中で楽しく暮らしています。ですがこの日は少しご機嫌ななめでした。
 それは何故かというとです、お家で奥さんに言うのでした。
「お気に入りのレインコートがね」
「あのマッキントッシュね」
「もう古くなってきたから」
 だからというのです。
「いい加減買い換えたらと言われたんだよ」
「私言ってないわよ」
「君以外にも言う人はいるよ」
「ジャクソンさん?」
「そう、昨日彼と一緒に飲んでいたらね」
 その時にというのです。
「言われたんだよ」
「マッキントッシュが古くなったって」
「そうなんだ」
「そういえば買ってかなり経つわね」
「君と結婚する前に買ったからね」
「そう考えるとね」
「相当に古いよ」
 それこそというのです。
「考えてみればね」
「それでどうするの?」
 奥さんはご主人に尋ねました。
「それで」
「確かに古いしね」
 だからと答えたフィッシャーさんでした。
「それもね」
「ジャクソンさんの言うことも一理あるのね」
「そう考えるし」
「それじゃあ買い換えるのね」
「迷っているんだ」
「だからあまり機嫌がよくないのね」
「そうなんだ」
 こう奥さんに答えるのでした。
「実際にね」
「迷っていても仕方ないわよ」
 奥さんはご主人に言いました。
「そうしていてもね」
「その通りだね」
「買うなら買うで」
「買わないなら買わないだね」
「どちらかよ」
「それだけだね」
「あなたにとってはお気に入りよね」
 そのレインコートはというのです。
「そうよね」
「あれを着ていたから助かったんだよ」
「鱒に飲み込まれた時も」
「あの時は駄目だって思ったけれど」
「鱒がマッキントッシュを味わって」
「凄くまずかったそうでね」
 それでというのです。
「僕を吐き出したからね」
「それで助かったわね」
「九死に一生を得たよ」
 まさにでした、その時のフィッシャーさんは。
「そのことを考えたら」
「絶対によね」
「しかもデザイン自体がね」
「お気に入りよね」
「気に入ったから買ったんだよ」
 奥さんと結婚するその前にです。
「そしてずっと着ていてね」
「命も助けてもらって」
「余計に好きだよ」
「それじゃあ買い換えるにも」
「決断が必要だよ」
 本当にというのです。
「どうしたものかな」
「そこが難しいわね」
「全くだよ」
 心から言うフィッシャーさんでした。
[2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ