暁 〜小説投稿サイト〜
宇宙を駆ける狩猟民族がファンタジーに現れました
第三部
名誉と誇り
にじゅうさん
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男は、私の左肩にどんなものが乗っているのか理解できたことだろう。
 バキバキと音を立てながら倒れていく木を凝視し、男は壊れた蛇口のように股間を濡らす。

「本当だっ! 本当に知らないんだ! この女を殺せば報酬は弾むって、騎士隊の幹部に推薦してやるって! それで、それで……」
「下種が……っ!」

 憤怒の声を漏らしたのは、エリステインであった。
 確かに、そんなことで殺されそうになっては幾つ命があっても足りない。
 間違いなく、この男の知らない、もっと上の存在からスタインが請け負った仕事なのだろう。
 しかし、この国は目立った争いもく、平時であれば軍に所属する兵などは武勲を上げることが難しい。それはつまり、なかなか出世ができないと言うことに繋がり、自然、給料も上がらない。
 ある程度の野心がある者であれば、そんな甘い言葉にもコロッと騙されてしまうのは、避けられない。

 正直、理解など微塵もできないが、これも長く続いた平和の弊害かと思う。国からみればミリ単位の戦争というものかもしれない。

「本当に知らないんだな?」
「本当だ、俺はなにも知らない! 知らないんだよ!」

 スタインが言っていたことは本当だった訳か。

 まあ、あまり期待はしていなかったが。

 涙と唾液を垂れ流し、震えながら必死に命乞いをしている男から手を離す。
 地面に強く尻を打った男は、小さく短い悲鳴を上げて後ずさり、余りにも無様なその姿を視界に納めながら、私もエリステインも微動だせずに男を見下ろす。

 もう、この男に用はない。
 私はエリステインの肩に手を回して、船へ戻るように促して、私も男から視線を切る。

 踵を返して森へと進んでいく姿に、男は見逃されたとでも思ったのだろう。一目散に森の切れ目へと走り出した。

 同時、私の左肩アームが動き、適当な位置まで走らせた男目掛けてプラズマキャスターを放つ。

 その音に反応したエリステインの肩がビクリと揺れたが、彼女が振り向くことはなかった。

私はそれをに反応を示すことなく、確かな手応えを感じたまま歩みを進めた。
 
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