第三部
名誉と誇り
にじゅうさん
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そこに引っ掛かって貰えれば御の字。ある程度の時間稼ぎと、相手がどのような行動にでるのかが、一番重要でなのである。
もし、我々種族と接触を持っているこの国の者が耳にすれば、当然、同族の耳にも入ることだろう。うまくそいつが引っ掛かれば良し。というか、そんな生き物がこの森にいるのに、行動しない同族はいないと私は考えていた。
合わせて、もし同族が動けば、それを成したのが同族であると相手も気が付くはずだ。
最悪な事態としては、既にそれが露呈しており、対策を立てられていることであるが、そうなってしまったらもう、真っ正面から迎え撃つほかない。
その際にエリステインを守りながら戦えるのか、という難題はあるが……。
その問題は、私が彼女にこちら側の装備を持たせ、ある程度の対抗手段を備えてやればいい。
もうなんだか、この地に降り立ったときと大分軌道が変わってしまって、修正が掛けられないところまでハマってしまった感がある。
もうヤダ。お家帰りたい……。
「そういう訳だ。同族がこの件に絡んでいる可能性がある以上、こちらにもそれなりの時間が必要だ」
「そう……ですか。でも、それだとあなたに全ての疑いが掛かることにもなりますよ?」
「それについては仕方のないことだ。そもそも私は人族ですらないのだからな……。だから私がやることに納得しろ、とは言わん。……割り切れ。生き残りたいならばな」
そう言って、話はここまでと私は暗に仄めかして、手に持った男を揺する。
さあ起きろ。
今すぐ起きろ、シャキッと起きろ。
プレートメイルのガシャガシャと鳴る音に紛れて、男が呻き声を上げる。
不快そうに眉間に皺を寄せ、ひく付く瞼。その様子に、私は覚醒が近いことを察して更に腕に力を込める。
より一層大きく、プレートメイルが鳴り響き、男はハッとした様子で瞳を開ける。
「んなっ! なんだぁ?!」
「良い夢は見られたか?」
揺らすのをやめ、ズイッと顔を近付ける。
「うひゃぁああ!」
「失礼なヤツだ」
顔面を蒼白にし、涙目で私を見返す瞳には、ありありと恐怖の色が見て取れた。更に辺りを見回して、ここが森の中で、かつ味方の1人もいないと分かるや、その体全体から絶望が滲み出してきた。
「それで。何故、彼女の命を狙った」
まるで子供のように震える男に、私は猶予を与えることなく問いかける。
「し、知らねぇ! おおお俺はただ、スタイン総隊長に命令されて……。う、嘘じゃない! 信じてくれ!」
「……ヤツを支援しているのは誰だ」
「知らない!」
私は男によく見えるよう、プラズマキャスターを一発、手頃な木へと打ち込む。
無惨に幹に穴を空け、横倒しになるその木を認めた
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