8部分:第八章
[8]前話
第八章
「内相ともお話するがだ」
「この事件についてですね」
「そうされてですね」
「やはり。公にはできない」
これはだ。絶対だというのだった。
「只の誘拐事件として処理する」
「では捜査関係者にはですね」
「口を閉ざせと」
「そうするしかない」
やや苦い顔になってだ。ドトールは話した。
「話しそうな人間はマインドコントロールをしてだ」
「記憶をロックするか消去する」
「そうするのですね」
「そうするしかない」
また言った。苦い顔でだ。この時代はマインドコントロールの技術も発達している。それでそうしたこともできるのである。この場合便利なことにだ。
だが、だった。ドトールはだ。それについてはだ。
浮かない顔を見せてだ。話したのだった。そしてだ。
アラガルと趙虎はだ。ここでだった。
「そして被害者達は」
「多くのカップル達のことですが」
このこともだ。尋ねたのだった。
「どうされますか」
「その記憶のことは」
「同じだ」
また浮かない顔で言うドトールだった。
「同じことをするしかない」
「ではマインドコントロールをして」
「そのうえで、ですね」
「なかったことにすると」
「公にできない話もある」
このことはだ。今は引き下がれないというのだった。
「そういうことだ。わかるか」
「はい、よく」
「仕方ありませんね」
「何でも公にしていいというものではない」
ドトールの言葉は暗い。だがそれでも言うのだった。
「仕方のないことだ」
「そうですね。それでは」
「私達もですね」
「私もだ。厄介な誘拐事件だった」
そういうことにするというのである。
「まさか動物園の園長が人身売買に関わっているとはな」
「はい、それでもです」
「危ういところで皆助かりました」
「君達の手柄だ。そして首謀者は」
あの男だ。彼に他ならなかった。
「既に犯罪に使ったものは没収した。そして彼もだ」
「裁判ですか」
「そうなりますか」
「いや、体調が思わしくない」
理由だった。明らかなだ。
「病死するかもな」
「そうですか、急死ですか」
「そうなりますか」
「裁判で何かを言う前に死ぬだろう」
言わせる訳にはいかない。何もかもをだというのだ。
「全ては。そうして終わる」
「わかりました。それでは」
「事件はこれで解決ですね」
「よかったことだ。本当にな」
これで話は終わった。カップル達は何とか何処かに売られることは避けられた。そして人身売買の主導者は裁判になる前に獄中で死んだ。動物園は閉鎖され後に跡形もなく破壊された。全ては何も残らなかった。
カップルの失踪 完
2011・3・7
[8]前話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ