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ソードアート・オンライン―【黒き剣士と暗銀の魔刃】
鉄色の刃と紅色の狂喜
零節:【魔刃】
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清潔と片付けるのもおこがましい位に、何故か空気に匂いが感じられ無い。
風の吹き方に歪なほど法則性があり、何処も彼処も違和感しかない。
木々や草花の質感が、細部を無視して作られた工芸品の様な感触を受ける。
尤もソコだけではない、一番の不思議は其処ではない―――片割れは“石室”に居たのに、何が一体どうなって、何故此処に寝ているのか。
血生臭い狭所へ赴いた筈なのに、どうして長閑な草原の上に座しているのか。
……それが、不可思議でならなかった。
自分は紅い悪魔“だった者”と、雌雄を決するという言葉から最も遠い、凄惨な殺し合いをしていたのではないのか?
真正面から突っ込んでいき、力滾らせ得物を振りかざし、ぶつかり合ったのでは無かったのか?
ならば今まで起きた事は本当に絵空事で有り、その者は草原の上で転寝をしていただけだったのだろうか?
「……これ、は……?」
……いや、違う。絶対に違う。
碧い悪魔“だった者”は心の底からそう思っていた。
上を見て広がるのは真っ青な青空ではなく……まるで空に蓋でもしているかのように鎮座する鉄の底。青空は横にしか広がっておらず、上を幾ら見上げていても雲一つ見えはしない。
ならば建造物の中なのだと仮定しても――――おそらく何層にも重なっていて、規模がしれない程巨大な建造物など、その碧い悪魔“だった者”は全くもって覚えがなかった。
そもそも、嘗て居た場所から一瞬で此処まで移動するなど……荒唐無稽もいい加減にしろと言いたくなるような所業だ。
碧い悪魔“だった者”は勿論、紅い悪魔“だった者”やごく少ない
観
(
・
)
覧
(
・
)
者
(
・
)
、更に彼等が兼ねてより感じていた
気
(
・
)
配
(
・
)
ですら、コレを行える
兵
(
つわもの
)
などいなかっただろう。
ならば一体何なのか……。
「……まさかあのアレ……遺跡、か……?」
偶然にも、碧い悪魔“だった者”には、ボヤけてはいれどある種の心当たりがあったらしい。
口にした遺跡―――それ即ち、彼等がぶつかり合っていたあの石室の事だろう。
幾つもの紋章が描いてあったその意匠からして、どうもタダの石造りではなかった模様。
様子から見るに意図としてあの場で闘っていた訳では無いらしいが……それが、幸か不幸か強制長距離転移という、途轍もない『異業』を身に受ける羽目を呼んでしまったようだ。
碧い悪魔“だった者”は己の頭を押さえ、顔にある大きな十字の傷をなぞる。
一瞬の硬直と静寂から……怒りが湧きあがって来たのか体を震わせ、跳ねる様にして立ち上がり辺りを見回した。
……が、目当ての者はおろか、勝手知ったる“モノ”すら欠片も影が見えない。
「そう、だ
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