3部分:第三章
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第三章
「そうします」
「あの星に恋人がおられるのですね」
「ええ、まあ」
声を聞いてそれだけだった。しかも頭の中で。
けれどそれでここまで来た。思えばおかしな話だ。
それでもそのおかしなことをして。僕はその星に向かっている。それが遂にだった。
そのことも心の中で噛み締めながら。僕は船員さんに答えた。
「ですから」
「いいですよね。恋人は」
「恋ですね」
「愛とも言っていいでしょうか」
船員さんはこんなことも言ってくれた。前から、旅の最初の頃から思っていたことだけれどこの船員さんは結構なロマンチストだ。
「それがありますから」
「愛ですね」
「日本からですよ。それは」
「それは?」
「勇気もないとできませんね」
「勇気ですか」
無謀と言っていいかも知れないなんてことも思った。船員さんの話を聞いて。
「僕は勇気がありますか?」
「ありますよ」
船員さんは微笑んで僕に答えてくれた。
「それもかなり」
「だといいんですけれど」
「だからお一人で旅をされているではありませんか」
「あの星までですね」
「遠くに」
そうしていること自体にだ。勇気が出ているというのだ。
「しかしそれもです」
「遂にですね」
「はい、終わります」
本当にだ。終点はもうすぐだった。
「では。最後まで」
「旅を楽しませてもらいます」
「そうして下さい」
こうした話をしてだった。僕はその星に遂に辿り着いた。そして。
星に辿り着くとすぐに港を飛び出てそこに向かった。彼女がいる場所に。
ここでもそこにいるという確証はなかった。ただ確信していた。彼女はそこにいると。だからそこに向かった。港を出た町の外れの湖のほとりの家に。そこに。
そこは一軒だけぽつんと湖のところに佇んでいた。そうした家だった。青い湖の傍に水色の家がある。そこに向かってだった。
チャイムを鳴らした。すると。
そこから細い人が出て来た。顔はあくまで細く肌は透き通る様に白い。切れ長に垂れた目は青で睫毛が長い。腰まであるさらさらとした髪は白く輝いている。水色のふわりとしたワンピースを着ている。
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