第一章 それは始まりの物語
第0話 それは突然の出来事
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いつもの朝、いつもの海未ちゃんにことりちゃん、いつもの光景。
でも、今朝は違った。ぷりぷり怒る海未ちゃんを背中にして穂乃果は自分の席に腰掛ける。ひんやりとした木材の椅子がちょっとだけ心地いい。
彼と別れて6年。その6年間はただぐうたらに過ごしていただけじゃない。
穂乃果は……ずっと会いたい人がいた。いつか会えると信じて、その時はもう、彼に迷惑をかけない良い女の子になるんだって。
海未ちゃんに怒られてばかりだから、まだまだ穂乃果が思う女の子にはなれていないかもしれない。
でも。
今日やっと。
彼に合うことができた。
茶色い瞳に茶色い髪の毛。昔から直毛だということでずっと前髪を上げるヘアスタイル―――バングルといったか。そのスタイルを崩さず、さっきこうして穂乃果の前に現れた。
穂乃果は知っている。
―――笹倉大地が帰って来たんだという事を。
「穂乃果?顔赤いですけど、具合悪いのですか?」
「いひゃぁっ!な、なんでもないよなんでも!」
〜☆〜
「それではここが理事長室よ」
「はい、失礼します」
あの後、すぐに理事長が出迎えてくれて無言のまま理事長室へ通された。SHRの時間帯だったらしいので女子生徒らに奇怪な目で見られることは無かったが、どうしても教室の前を通らなければならなかった為、恐らく何人かは俺の存在を視認してしまっただろう。
俺は理事長に促されて、理事長室の真ん中の長ソファに腰掛ける。
理事長は俺が座ったのを見計らって、俺と対面する形で反対のソファに座る。
「お菓子、いかがですか?この学校に私の娘がいるんだけど、これは娘が友達と温泉旅行に行った時のお土産だそうだわ」
「いえ……お気持ちだけ受け取っておきます」
残念そうに眉を寄せて、すぐさま表情は変わる。
その娘の母親という顔から音ノ木坂学院の理事長、という顔に。
「初めまして。私は国立音ノ木坂学院高校の理事長の南というものです。今回は”音ノ木坂学院共学化適性検査”の”試験生”として、本校に転入していただき、誠にありがとうございます」
深々と、完璧な一礼に俺も思わず「いえいえ」と頭を下げる。
流石理事長というだけあってその完璧な一礼から容姿まで圧倒されてしまう。
「恐らく、貴方のお母様からお聞きしたかもしれませんが、改めてもう一度今回の案件について説明いたします。現在我が学院は、少子化と数年前に開校した都会の高校の影響によって生徒の減少という状況が数年続いております」
「そうなんですか」
「ええ
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