第一章 それは始まりの物語
第0話 それは突然の出来事
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いないわ」
「……何を考えてるんだ?母さんは」
「貴方の将来の事を考えてるわ。だって私の大切な息子だもの」
「…ちっ」
母は満面の笑みでそう付け足す。ここまで言われた俺は流石に反論する気も失せ、「はぁっ」っとため息をつきながら頭を抱える。
正直、母の言ってることの半分は理解できていない。いや、できているのだろうが気持ちがそれを良しとしていないのだろう。
理事長の頼みだから、これは間違いないだろう。
俺の将来の為になる。母には悪いがここがどうしても理解できない。高校のレベルを下げ、廃校寸前の高校で俺以外女子というまるっきりの異分子に囲まれながら残りの高校生活を過ごす。
女の子が嫌いとまではいかないが、なんとも言葉に表しにくい感情に言葉が詰まる。
しかし……。
「……期間は」
「一年間よ」
母さんに聞こえない程度に軽く舌打ちをして、代わりにわかりやすく気だるげなため息を吐く。
「……一応、続きを聞こう。俺にどうして欲しいんだ?」
「大地に、音ノ木坂学院に通って欲しいわ」
深々と、今までにないくらい頭を下げた母さんを見て、俺はもう一度ため息をこぼした。
〜☆〜
「……でっか」
そんなこんなでその時がやって来た4月の頭。
俺は音ノ木坂学院の正門前でそびえ立つ校舎に圧倒されていた。片手には先日新しく送られてきた今日の案内の紙を握りしめていて、緊張と共に噴き出てきた手汗に少しふやけている。
俺は入学式はこうも緊張する特別な日だったか?と、ふと考える。
いや、正確には入学式じゃなくて始業式だが、指定された時間は始業式開始の20分前で、俺の場所はステージ裏で見守るとのこと。全校生徒みんなの前に立たされるという羞恥プレイは回避したものの、女だらけの学校で、果たして居場所を作れるのかどうかが、なによりも不安な要因だ。
???俺には小学四年生までの記憶が一切ない。
気が付けばもう小学五年生で、始業式の日に全校児童の前で自己紹介したのは覚えている。
確かどこかから転校してきた、と言った覚えがある。
だけど、そのどこかが分からなくて、そもそも”俺が誰なのか”全然わからないままなのに、周囲に気を配るなんてできっこない。
自分という存在が明確でないまますぐに小学校を卒業し、中学生になった。
「はぁ……なにやってるんだろうな、俺は」
本日何度目かのため息をこぼす。
ここに来るまでの桜並木の道の綺麗さに感動し、階段の長さはとてもいい運動になった。
勉強の方は独学でなんとかするし
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