第六話 魔道技師のお仕事
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イドの脇腹に触れていた短剣の切っ先が僅かにぶれた。
しかし、驚くのも無理はなく、現在ライドと脅迫者の位置関係は肩が触れ合うほどに近づいているものの、触れている部分はコートで隠れて見えないようになっていた。
特に、この薄暗い店内で“目視確認”するのは殆ど不可能と言って良かったのだから。
「……ほう」
少女の言葉にターバンの男はギラリとした視線を脅迫者に向けると、
「先客か」
そう呟くと、今度はその視線をニコニコとしている少女に向けて、
「ミリー」
恐らく少女の名前だろう──を呼びながら組んでいた腕を解き、ライドの命を脅かしている脅迫者に向けて右手の人差し指を突きつけ一言言い放つのと、
「殺れ」
脅迫者の右手の短剣がライドに向かって躊躇いなく動く気配を感じた瞬間、踵で蹴り飛ばされたような衝撃を背中に受けつつライドが店内の奥に向かって吹き飛ばされるのは殆ど同時だった。
雑多な荷物の中に頭から突っ込み、何とか起き上がろうとしているライドの耳に聞こえてきたのは激しく打ち付けられた金属音。そして、踏み込みか着地かどちらとも取れない床を叩く剣呑な足音だった。
「……なっ!?」
ライドはようやく起き上がると目の前に広がった光景に絶句する。
視界に映っているのは3人の人間。
一番近くにいるのはターバンの男。
この男は初めて見た時と変わらず椅子に腰を下ろしたまま腕を組んで少女と脅迫者の姿を眺めていた。
元々広くない店内に、ライドが突っ込んだ場所が資材置き場だったから、位置的にはライドの手が届く程近くに鎮座していると言える。
相変わらず目つきの悪さが目立ったが、その色は会った時よりも更に凶悪で、殺人者だと紹介されても納得してしまうに違いなかった。
距離的に次に近いのは赤髪の少女。
いつの間に抜いたのか2本のショートソードを両手に持って、件の脅迫者をジッと見つめている。
その表情は笑顔ではあったのだが、先程までのニコニコとしたものとは違い唇の端を僅かに上げて、どちらかといえば微笑に近い。しかし、切れ長の目がそんな雰囲気を打ち消して、まるで獲物を狙う野良猫のようだった。
最も遠いのはライドにとって悪夢の始まりであった男。
常に背後か真横、それも短剣を押し当てられた関係であった事からライドにとってその容姿をはっきり見たのは初めてだった。
右手に短剣を持ち、左手にはいつの間に抜いたのか奇妙な形の剣を逆手で持って正面で立てるように構えている。その姿は正面からの攻撃を咄嗟の判断で防いだように見えるが、実際にそうなのだろう。
瞳は僅かに暗い緑色で、憤怒の形相を少女に対して向けていた。
しかし、それよりも目を引いたのは瞳の色よりも明るい色
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