第六話 魔道技師のお仕事
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つセットの魔道具で、片方の魔道具を起動させると対になっている魔道具が発動して音を発するという単純なものだったが、待ち合わせや何か危急の知らせを要する場合に非常に便利なものだとの謳い文句で売る事が出来た。
それは、以前のライドならば作ることも出来なかった技術を使用した魔道具だったが、今まで避けてきた修理の仕事が自分の技術を上げるのに一役買ったようにも思っていた。
何しろ、他人の作った魔道具の中を開けて調べるわけだから、間接的に他人の技術を盗んでいるにも等しい。
今までは殆ど独学に近かったライドの技術に基本が合わさった事を考えると、今回の借金はライドにとってプラスになったのだろう。
そんな理由もあり、ライドは朝から非常に機嫌が良かった。
日常業務以外の本来の収入が乗った為に先の見通しも多少は立つし、次の魔道具の開発費用にも回せるというものだ。
それだけに一刻も早く家に帰る事を優先して裏路地を通ったのが災いした。
まだ真昼間だというのにいきなり後ろから両腕を封じられた上、喉元に刃物を突きつけられて冒頭に戻るというわけである。
「貴様、魔石商人だな?」
「…………」
突然の襲撃に思わず言葉を失ってしまったライドだったが、男は構わず言葉を続ける。
「黙った所で無駄な事だ。貴様から漂うこのむせ返るような魔石臭。これほど濃厚な臭いを持つ者は魔石を扱っている人間以外にありえない」
「むせ返るような匂いって……その言い方だと僕の体から濃厚なスメルが漂っているように聞こえて嫌なんすけど」
「黙れ。貴様は私の言った事に対してだけ素直に答えていればいい」
首に触れた金属の感触に怯えたライドの精一杯の強がりだったが、男は首に当てた短剣の力を強くする事でそれ以上の言葉を封じてしまう。
その行為に硬直してしまったライドの耳元に男は顔を近づけると、再び先程の台詞を口にした。
「もう一度聞く。貴様、魔石商人だな?」
「ち、違います……」
真っ青な顔で否定の言葉を口にするライドだったが、今度は無言で首に当てた短剣を横にスライドさせた男の動きを察知して、いつもだったら決して出ないような大声で男の問いに答える。
「ほ、本当に違うんですっ!! 僕の体から魔石の臭いがするのは、僕が魔道技師だからだと思いまふ!!」
「……魔道技師?」
唐突に発したライドの声に対して持っていた布切れをライドの口に突っ込みながら、男はライドの言葉を反芻する。
スライドさせた事によってライドの首には赤い線が生まれ、そこから赤い血液が一筋流れていたが、男はそんな事は気にしないとばかりに顔を上げた。
「……成る程。魔道技師……か。これはある意味商人よりも都合が良かったかもしれんな」
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