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少女の黒歴史を乱すは人外(ブルーチェ)
第二十五話:対決・紅の姫騎士(下)
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 マリスの視線を背に受け、俺はなおも叫び続ける。


「……俺はマリスと組む。お前とは、組む気がしねえ」
「な……そいつは殺戮の天使だぞ? 人を、幽霊達を貶める死神だぞ! 彼女よりボクの方が信頼できないというのかっ!?」
「嬉しそうに飯を食って、他者に抱きつき気持ちよさげに目を細めて、相手を尊重し真正面から見てくれる……そんな人と、初対面の奴を目的の為なら殺しても酷いとすら思わねえ、外見だけ小奇麗で中の無いがらんどうの―――どっちが信頼に足るかは言わずもがなだろうが」


 言い終えると共に、俺は今一番の感情をこめてロザリンドを睨み付ける。
 ロザリンドは声を詰まらせ、僅かに一歩引く。


「お前は何なんだロザリンド……いや、木村玉子」
「貴様、その名前は―――」
「正義だの騎士道だのと謳って重視しなくても良い設定(なかみ)を敢えて演じておきながら……いざ局面に立ち会えばまどろっこしいからと、理解するのが難しいからと繋がりを悟らず一切合財断つか?」
「ち、違う! 正しいのはボクで―――」
「ロザリンドを選んだ理由は何だ? 外見が何であれ、力を得て蘇る事が出来れば良かっただけかお前は!? 演じたのはただ外っ面に酔いたかっただけか!?」
「こっ、このボクを侮辱する―――」
「三下役者が!! 物語の騎士に憧れたならそれを貫け! 格好良い自分が好きなら押し通しやがれ! ……願いすら切り捨て弱者相手に己が持論を突き付けて、更に有無を言わせないのが―――己が絶対的に正しいとするのがお前の騎士道か!? そんな格好悪いものにお前は憧れたのか!?」
「もういい! もう分かった!」


 ロザリンドは多く大きく頭を横へ振り、舌戦はたくさんだとばかりに剣を振り上げた。


「君は今、その死神と無関係ではなくなった、その勇気に敬意を―――」
「口で己の正しさを証明できなければ、其処らの悪人同然に力技か? そんなものが騎士道で、お前の正義か木村玉子!」
「黙れえええぇぇぇぇぇええええええええぇぇえェェっ!!!」


 恐らくマリスを切ろうとした時点で、既にこいつの精神は張り詰めていたんだろう。
 正義だなんだと己に言い聞かせ、絶対的善は己なのだと強く思いながら。
 加えて己の逆鱗に二度も触れる俺の言葉だ……別に意図した訳じゃあ無い、自然と口を吐いて出てしまっていただけだ。
 ……言いたいことは言った。全て叩きつけた。
 少しだけだが、満足している。

 大きく叫びながら剣を振るおうとするロザリンドを、俺は真正面から見つめている。
 速く、強く、何より重い、人類の繰り出せる限界を超えた斬撃。
 避ける事など困難で……しかし当然、マトモに食らってやる気はない。一か八かで防御して、反撃をぶちこむ為に。
 マリス
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