第二十五話:対決・紅の姫騎士(下)
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温かみこそあれど振り切れ過ぎていて、しかもその実己の欲求を俺にぶつけてくる者ばかり。
やれ自分の言う事を聞け聞かねば殴ると脅し、やれ実験台だ憂さ晴らしだと執拗に絡み、やれラブコメして来いやれ男なんだからと苦心ばかり乗せてきて、やれ嘘を吐くな隠し事するなと余計なルールを強制し、やれ自分の兄はツンデレなのだ本当はこうなのだと曲解を押し付ける
結果―――“俺”を見てくれている者は、皆無だといっても良かった。
温かいだけでは駄目なのだと知った時にはもう遅過ぎた。
だが、マリスは違う。
家族の話で曲解をのせられようとも、最後はオレの意見を聞き入れてくれた。
訳の分からない言葉で誤魔化すのではなく、実直に感情を伝え、本心をぶつけてきてくれた。
無表情でボソボソ喋っていても、決してあらぬ方向を見やりながら自分本位だけでは喋らなかった。
……ただ真正面から、俺を見てくれた存在なのだ。
冷たさから温かみに飢えていた、理不尽から理解に飢えていた俺には、大切な存在なのだ。
何より、人と触れあう事が素晴らしいのだと、美味しいという意味はとても素晴らしいのだと、情念込めて語ったその想いを、俺は見捨てる事が出来ない……!
「マリス! お前は如何したい!」
「…………! ……麟、斗?」
「お前は本当に消えたいのか!? 此処に居たくないのか……死神に還って見守るだけで本当に、本当に良いんだな!?」
この世界に生まれ落ちてから、この方一切出さなかった感情をたっぷりこめた言葉で、拳を振いながらマリスに問う。
やがて、小さく……しかし確かな答えが返って来た。
「……良く、無い……」
「……」
「……京平と、楓子と話したい……優子のご飯を食べたい…………麟斗と、一緒に居たい……!」
「……そうか」
一瞬間だけ、俺は動きを止める。
吊られてマリスの方へ跳びかかって行きそうになるロザリンドを、俺は火事場の馬鹿力で強引の留め、お返しだと投げとばした。
「ぶはっ……り、麟斗君!? 何故立ちはだかるんだ!?」
俺はロザリンドの言葉を受け、すぐには追撃せず立ち止まる。
口を開けば、息を其処まですっていないのに、響き渡る様な声が自然と出て来る。
「弱い奴を見殺しにして、自分と言う強い奴に乗り換えろ、相手は悪人だし酷くない、何よりそれが当たり前だから…………か」
「……り、麟斗く―――」
「当たり前な訳、ねえだろうが!!」
一度為、更に吐き出す。
「今此処にマリスは生きている! 一つの命として、人として生きている!! それを見殺しにして乗り換えろだと? ……お前は目的の為なら上を全部彼方へ放り捨てる悪党か何かか!?」
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