第五話 白銀の傭兵バシリッサ
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浮かぶ魔石の光のようだとライドは思った。
明るい場所では周りに同化して決してその存在を主張せず、暗闇の中でのみその存在をおずおずと主張する小さな、それでいて強力な魔石達。
鉱脈に広がる小さな星空。
もしも、この町の暗闇が鉱脈のそれであったなら、彼女はさしずめ魔石だろうか。
ライドと変わらぬ年齢で、決して恵まれていると言えない体格で傭兵としてそれなりにでも名を売る事が出来るのは並大抵の事ではない。
そこまでの域に達するには、ライドと同じように決して譲れない理由がある筈で、本来であればこんな場所で足止めをするべきなのではないのではないかと感じてしまう。
それでも少女は律儀に己の矜持に則ってこの町に留まりライドを守ると口にした。
そして、少年も本来の目的を忘れたかのようにこの町に留まり続けている。
お互い留まる理由は違うだろう。
しかし、その真にあるものは案外近いものなのではないかとライドは何とはなしに思っていた。
ふと、そんな折に彼女に言っていない言葉がある事を思い出す。
それは、命を守ってもらう契約の証明としてはあまりにも矮小な言葉ではあったが、それでも、契約してからここまで、ライドはバシリッサに対して感じていたのはずっと「どうにかして契約の見直しができないか?」という事ばかりだった。
勿論、それ以上の言葉をバシリッサが求めていない事もわかっている。
わかっているが、ライドはあの時──名も知らぬ少女であったバシリッサに自らを物売りだと名乗ったのだ。
名乗った以上はそれなりの敬意は払うべきだ。
銀色の輝きはまだ見える。
それは今にも消えそうで、次の瞬間には見えなくなってしまう程の小さな光。
それでもライドは口にした。
届く事など期待していない、
「まいどあり」
自己満足でしかない謝礼の言葉を。
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