第五話 白銀の傭兵バシリッサ
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したバシリッサに対してそれとなく拒否の姿勢を見せていたライドだったが、どうやらよほど頑固なのだろうバシリッサの言葉に、結局は押し込まれてしまっていた。
現在のバシリッサは脛までの長さはある外套を身に纏い、肩から旅の必需品が入っているであろう袋を背負っていた。
遺跡に入る前に必要最低限の物以外は入口に置いておいたらしい。そのおかげでボロボロになった衣服と晒された肌を見せなくて済んでいるという意味では良い判断だったのだろう。
そんな彼女にライドは深い溜息を吐くと、半ば諦めた様に右手を揺らす。
「そう。わかったよ。どの道君に借りたお金も返さなくちゃいけないし、この町に留まってくれるというのは歓迎だ」
「別に返さなくてもいいですよ?」
「返すよ。依頼と家賃は別物だから」
疲れ果てたようなライドの言葉に、バシリッサはクスリと笑うとそれ以上は何も言わない。
それは、この短い時間でもある程度の人となりを見極めたからなのかもしれなかった。
「それでは、私はこの町で宿を借りて、傭兵の仕事を請け負う事にします。もしも出掛ける事があったら一声掛けてくださいね。この町で最も優先順位が高いのは貴方の護衛なのですから」
「分かった。そうするよ」
「はい」
ライドの言葉に、バシリッサは今度こそライドに背を向けて夜の街道を歩き出す。
向かう先にあるのは宿屋だろうが、今の時間で営業しているかどうかは難しい所だ。最も、空いていなかった所でライドの家に来るだけだろう。
しばらく少女の背中と月明かりに反射するようにその存在感を主張している銀色の尻尾を見つめていたライドだったが、帰宅する為に地面に置いておいたザックを持ち上げて、直ぐに違和感に気がついた。
手にしたザックは遺跡からカンタールに帰ってきた時に比べて明らかに重くなっていたのだ。
出発する時はザックに入っていた『ライド式浄水器』は無残にも破壊され、その核であった魔石は報酬としてバシリッサに渡してしまったのだから、軽くなるならともかく重くなるのはありえない。
遺跡からの帰り道で多少疲れていたとは言え、いくらなんでも気のせいで済ませられる重さの変化では無かったのだ。
ライドは無言でザックを地面に置き直した後に中身を確認すると、そこにはザック一杯に保存食が詰まっていた。恐らく、ライドが家賃を払いに行っている間に誰かがこっそり中に入れたのだろう。
誰が?
考えるまでもない。
そんな事が出来る人間は現状では一人しかいないのだから。
ライドは身を屈めた姿勢のまま先ほどバシリッサが向かった先に目を向ける。
そこには距離が離れ小さくなってしまったけれど、月明かりに反射した小さな銀色が確かに見えた。
その姿はまるで、明かりを消した時に暗闇に
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