第五話 白銀の傭兵バシリッサ
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てから遺跡を出た後、闇に包まれた森を抜け、カンタールの町にたどり着いたのは大部分の民家の窓から明かりが消えてしまっている程遅い時間になっていた。
それでもライドはその足で大家であるネリイの家まで急いで向かい、寝ぼけ眼のネリイの右手に約束の家賃を握りこませた後、こうして銀髪の少女──バシリッサの元まで戻ってきた所だった。
ちなみに、支払った家賃はバシリッサに『立て替えて』もらったものだ。
バシリッサ本人からは契約の範囲内だと無償での提供を提案されたが、それは丁重に断った。
本音を言ってしまえばそれは飛び付きたくなるような話ではあったのだが、“これからの事”を考えた場合、それは決してライド本人にとって得にはならないと感じたからだ。
そうして戻ってきたライドに対して、ネリイの家の傍の街道沿いで待っていたバシリッサから開口一番笑顔で言われたのが冒頭の台詞だったというわけだ。
その言葉でライド自身今の今までお互いの事を殆ど知らずにここまで来た事に気がつき苦笑した。
「はは……そういえば、お互い自己紹介もまだだったね。なんだか今更な気もするけど……僕の名はライド。流れの魔導技師だ。今ではこの町に腰を落ち着けて修業中……かな」
ライドの自己紹介に、バシリッサただ一言「そうですか」と口にする。
元より契約の時にライドの事に関しては触り程度とはいえ聞いていたので、バシリッサにとっての新鮮な情報といえば“流れの”魔導技師である事位で、特に聞き返すような感想は抱かなかったのかもしれない。
だから、バシリッサが話すのはこれからの事。
「ではライド様。これからしばらくの間貴方の身を守らせて頂きますので、よろしくお願いします」
そう言ってぺこりと頭を下げるバシリッサに対して、ライドは困ったように頬を掻く。
そう。これこそがライドが家賃に関してバシリッサからの好意を素直に受けなかった理由だった。
「ああ……それなんだけど、本当にこれから僕の護衛をしてくれるの? 報酬も無く?」
あの時ライドが少女と交わした契約期間は『遺跡を抜けるまで』だ。にも関わらず、バシリッサは遺跡を抜けた後もこうしてライドの護衛を申し出てきた。
ライド自身が殆ど一文無しである事も、家賃を滞納している事を話したにも関わらず……だ。
「報酬は既に頂いています。最高ランクである“聖光”の魔石を譲ってもらった以上、中途半端な仕事は出来ません」
「いや、そもそもその報酬なんだけどね……」
「遠慮はいりません。こう見えて私はこの筋ではそれなりに有名なんですよ? 『白銀のバシリッサ』等と呼ばれる事があるくらいには」
ああ言えばこう言うとはこういう事を言うのだろう。
遺跡からの帰りにこの後も継続して護衛を続けると口に
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