第6章 流されて異界
第142話 九鴉九殺
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く。
そう、これは龍脈を統べ、周囲に存在するすべての木行に属する存在を通じて気を吸い上げる術式。三次元で再現されつつある超巨大な魔術回路。
周辺の地域に存在する龍脈の流れすべてを一時的にこの周囲に集約。その巨大な力を俺の扱い易い木行の霊気へと変換を行い、水気の勝ち過ぎたこの地の聖別を行う。更に、幾らドラゴンキラーの迦楼羅が支配する炎であったとしても水剋火。いや、先ほどまでのこの高坂の中央公園は水乗火。水の勢いが強すぎて火を克し過ぎ、完全に火を消火して仕舞う状態であった。
故に、一時的に木行の力を強め、水生木。水から木が生まれ、木生火。木から火が生まれる状況を作り出し、強すぎる水気を抑えようとした。
【弓月さん、導きの矢を頼む】
周囲を舞う精霊たちが、更に歓喜の歌を強めた。真っ白な光で張り詰めつつある俺の世界は既に臨界に近い。
同時に増す火勢。これは矢道を作り出す為に、再び火界呪の勢いを増した証拠。
ゆっくりと、まるで力を蓄えるかのように、ゆっくりと弓弦を引き詰めて行く。
両手の間にみなぎった力が天へと向かって果てしなく伸びて行く。そう言うイメージ。
その時、眩いばかりの黄金。そして、それに続く甲高い鳴弦の響きが、闇と赤色に染まる氷空へと駆け登る!
行ける!
丹田より発生した力が渦を巻くかのように脊柱を駆け上がり、腕を抜け、天を向けた矢の先まで到達。臨界まで高まっていた龍気の向かう先を固定。
既に霊的な砦の中は俺の龍気に完全に満たされ、普通の人間でも目を開けて居られないほどの光輝に包まれている。
小さき精霊たちが舞い、弓月さんの唱える大祓いの祝詞と、鳴弦の高く澄んだ音に包まれた世界。その、聖なる音に満ちた世界の中で、ふと耳に懐かしい音色が届いた。涼しげな銀の音色。但し、それは弓月さんが発した物ではない。何処か遙か遠い場所。しかし、とても近い場所から聞こえて来た懐かしき想い出の音色。
これは……。これは懐かしい退魔の鈴の音。かつての俺が常に身に着けていた銀の鈴。
その瞬間!
再び起立する炎の柱。その真ん中を奔り抜ける音速の矢。そのふたつが、蛇神を構成する物質を焼き、翼ある赤き蛇を貫き、上空へと抜ける矢道を造り出す!
刹那、光が、そして鈴の音が弾けた!
放たれた光。それは眩いまでの光輝を放ちながら、炎の中心に開いた矢道を何処までも高く、高く、高く、闇と虚無に染まる冬の氷空を昇り詰めて行く――
鳴り響くは銀の音。かつて豊葦原の千五百秋の瑞穂の国を霊的に支えた少女が、常に身に付けていた退魔の鈴が遠鳴りを放つ。
そう、炎が潰え、音速の矢が勢いを失った後も昇り続けた銀の矢。
「九鴉九殺!」
囁かれ
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