第6章 流されて異界
第142話 九鴉九殺
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って起きる視力の低下などでは無さそうな雰囲気。何故ならば、アストラル体の有希から送られて来ているはずの視覚情報を理解する事が、今の俺には出来ていませんから。
視覚を司る木行の神獣のトップ。龍種の視覚を禁じるとは、どのような術を行使されたのか分かりませんが……。
但し、見鬼と視覚はまったく別の能力。拡大した認識力は視覚からの情報を補って余りある状態。今は問題ない。
「弓月さん、ひとつ頼みがある」
一時的に俺との間に霊道を開いて、大祓いの祝詞の面倒を一人で見て欲しい。
これから自らが編む術式のあらましを手短に説明した後に、そう頼む俺。但し、これから行う策の成功率が正確に言ってどの程度あるのか、……と問われると、分からないと答える事しか出来ない内容。少なくとも今回の生で行使した覚えはなく、奴に無理矢理思い出さされた記憶としてもかなり古い転生の記憶に含まれる技だと思われるので……。
単純に技の発動率や、安定性から言うのならクラウソラスの一撃の方が安全だし、目的や効果を考えても、十分な神話的裏付けもある技だと思う。
しかし、
「分かりました」
今度の作戦に関しては、かなり成功率が低い事が、先ほどの俺の短い説明だけでも理解出来たはず。しかし、弓月さんはその事に関しては一切触れる事なく、更に、有希のアストラル体が俺に付き従っている事についても何も問う事もなくあっさりと受け入れてくれる。
まさか、自分自身の龍気を俺一人では制御し切れず、その為に巫女を必要としている等とは分かってはいない、……とは思いますが。
「相馬さんには私から伝えて置きます」
そう答えてから、俺に視線を向けたまま立ち尽くす彼女。
右手で印を結び、短く口訣を唱える俺。そして、左目から流れ出した紅い液体で指先を染め……。
……弓月さんのくちびるに薄い色を着けた。
その瞬間、何かに怯えたかのように弓月さんが微かに震えた。しかし、それも一瞬。直ぐに何事もなかったかのように小さく首肯き――
「――根国、底国に坐す速佐須良比賣と言う神、持ち佐須良ひ、失ひてむ」
大祓いの祝詞を唱え続ける。
少し首肯く俺。何にしても、彼女に関してはこれで問題ない、と言う事。
それに、さつきに関しても連絡を行ってくれるのなら、そちらも問題なし。後は俺の飛霊たちと、残った万結が計画通りに動いてくれた上で……。
俺と契約を交わした最後の如意宝珠『憤』を起動。心臓を表わす『りっしんべん』に、三つの足跡を表わす象形と、貝=貨幣の象形から、心の中を駆け巡る強い感情を表現する漢字。
強すぎる感情に支配される事を戒める戒律が有る為、コイツは使い所の難しい宝貝だが、今はそんな余裕のある状況ではない
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