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蒼き夢の果てに
第6章 流されて異界
第142話 九鴉九殺
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に、地上からの槍……それが持つ特殊な気配から推測すると、俺が急場しのぎの霊的な砦を構成した際に使用した桜などではない、本当に槍として相応しい神話を持ったヤドリギを使用したミストルティンの槍や、九天応元雷声普化天尊法(キュウテンオウゲンライフカテンソンホウ)による援護射撃により次々と散華させられて行く縄文の蛇たち。
 しかし、それは所詮、元々がアラハバキの呪力が凝って出来上がった存在。散華、蒸発させられた次の瞬間には再生し、再び、包囲の網を狭めて行く。

 そう、奴らに出来るのはただひとつ。その身を敵にぶつける事だけ。
 但し、その威力は迦楼羅炎を潜り抜けた後に、俺の構築した結界を揺らせるだけの破壊力を帯びている以上、生身のさつきに対して簡単に命中させる訳には行かない。
 故に、普段の高速移動&一撃離脱戦法を封印。周囲を埋め尽くす翼ある蛇に対して、大規模の炎を召喚して燃やす、と言う方法しか持ち得ない状況と成っている。

 このままでは、何れさつき達の方が精神を消耗し切って仕舞う。

 現実の時間に換算すると数秒にも満たない時間の逡巡の後、覚悟を決める俺。やっても、やらなくても結果は同じ。結局、後悔する可能性があるのなら、やって見てから失敗した後に後悔した方がマシ。
 おそらく、成功する可能性が五割は存在するし、仮に失敗したとしてもまったく無駄となる可能性は低い。クラウソラスの一撃なら、幾ら古の蛇神とはいえ瞬時に回復出来る程度の被害で終わる事はない。
 目的はすべての首の一時的な無力化……なのだが、流石に複数目標を同時攻撃出来るかどうかは神のみぞ知るレベル……。

「弓月さ――」

 意を決し、再び、彼女に話し掛けようとした刹那、また発生する違和感。左目から流れ出す大量の熱い液体が頬を濡らし、そして同時に発生した激痛に思わず膝を突く俺。
 しかし――
 しかし、大丈夫。これは以前にも経験した事のある感覚。警戒すべき事態ではない。

 後方……丁度、背にしている桜の木から感じる温かい気配。それと同時に、祝詞を紡ぎ続ける弓月さんが発する驚きの気が伝わって来た。

「有希、頼む」

 右肩に置かれる小さな手の感触と、彼女の発する気配から現われた二人の特定。いや、その名を呼び掛けた瞬間には、同時に現われたもう一人の良く知っている人物の気配は再び、桜の木の向こう側へと消えたので……。
 旅館に残して来た二体の飛霊の内の一体は、有希と共にこの砦内に侵入。その後、彼女だけを残し、本人は晴明桔梗結界を維持する為に、他の頂点へと転移を行ったのでしょう。

 肯定を示す微かな気配。彼女に関してはこれだけの言葉ですべて伝わる。

「大丈夫。あなたは、わたしが護る」

 聞き慣れた彼女の澄んだ声。そして、迷いを感じさせる事の
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