第6章 流されて異界
第142話 九鴉九殺
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り、それが蛇の形へと変化したモノ。それらが後から後から顕われては、不可視の天蓋、堅固な壁へと激突。肉片混じりの赤い液体へとその姿を変えた一瞬の後には迦楼羅の炎に包まれ浄化される。
延々とただ繰り返されるだけの行為。
その度に揺れ、想定以上の外部からの負荷に対して、魔術回路を空中に浮かび上がらせ続ける霊的な砦。但し、これは現状では徒労に終わる行為。
確かに、多少の危険は伴うでしょう。例えば、普段の結界のみの場合ならば、これだけ断続的に強力な攻撃が加えられ続ければ、何時かはこちらの精神力が続かず崩壊していたかも知れない。しかし、今はそれ以外のプラスα……迦楼羅炎が周囲に存在する限り、幾らアラハバキの呪力とは言え簡単にこの砦を食い破る事は難しいはず。
そう、迦楼羅炎が存在する限りは――
土の呪力の濃い化け百足を示す光点が、迦楼羅炎の占める空間の向こう側でこの霊的な砦を護るように動いているのは感じる。更に、最初は不安そうな声で俺を呼んだ弓月さんも、直ぐに自分を取り戻し、俺から受け継いだ大祓いの祝詞を口にしながら、鳴弦で翼ある蛇たちを迎撃中。
一矢にて二、三の蛇を撃ち落とし、その軌跡に触れるだけでも、急降下の勢いを減じさせられる赤き翼ある蛇たち。
しかし、例え、どんなに矢継ぎ早に鳴弦を放とうとも、敵の数があまりにも多過ぎて――
片や、上空に関しては……。
地上からの援護射撃と、弓月さんの送り出した防御用の蟲に因って守られているさつきとその分身たち。
本来の彼女の攻撃のパターンは高速で飛行しながらの一撃離脱戦法。まして、術も攻撃特化型の火行。剣術も初手で如何に大きな被害を敵に与えるか、と言う事に特化した剛の剣なので、この戦法に相応しい取り合わせと言えるでしょう。
但し、故に今は――
ほぼ一か所に滞空するかのような七人のさつき。その武器であるはずの高速移動が、周囲を翼ある蛇に囲まれた今の状態では弱点にしかならない。
そう、この新たに現われたアラハバキの眷属たる蛇たちには、大した能力は存在していないと思う。出来る事はおそらくただひとつ。
彼女らの周囲を埋め尽くす翼ある蛇。蛇神アラハバキが咆哮を放つたびに、うぞうぞと赤に染まった氷空が揺れる。それは通常の赤が示す炎の揺らめきとは違うタイプの揺れ。荒れ狂う大海原が見せるうねり。
激しく追いすがり、重なり合って隆起する大波。下降、上昇を繰り返し、渦を巻きながら旋回する潮の流れ。ただひたすら、執拗なまでに迫る緊張感にも似た何か。
縄文の時代に暮らしていた人々がその存在を幻視し、彼の姿を土器や土偶に表現した世界が今、俺の目の前に現われていたのだ。
刹那、大波が打ち寄せるが如く翼ある蛇の一群が接近を開始する。しかし、さつきの広範囲を燃やし尽くす術
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