第十六話 幼児期O
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「運命」ってなんなのだろう。
ゲームや漫画とかによく出てくる単語ではあるけれど、俺は正直よくわからない。実際にあるのかもしれないし、ないのかもしれない。そんなあいまいなもののように、俺は思っている。
少なくとも俺は、良い運命なら喜び、悪い運命ならがっかり、そんな程度の占いのように感じていた。というか、あんまり深く考えたこともなかった。そう思うと、あまり「運命」というものを、俺は信じていなかったのだろう。
だけど、この世界に転生してからは、時々そんなことを考えるようになった。俺がここにいるのは、偶然なのだろうかって。もしかしたら、運命だったのかなって。そんな風に。
でも、どっちだろうと俺はもうここにいる。ここで生きている。なら、もうあんまり意味のない考えなのかもしれない。それでも、もし俺がここにいるのが必然だったのなら。こんな物語のど真ん中に、死亡フラグ満載なところに、理不尽だと叫ぶようなそんな場所に、転生することが決まっていたのなら。
『おめでとうございます。元気な男の子と女の子ですよ』
『はい。ふふ、かわいらしいわ』
『お前も、この子たちもよく頑張ったな』
優しいぬくもり。温かい声。隣に感じる大切な片割れ。祝福してくれる思い。
『アルヴィン、アリシア、生まれてきてくれてありがとう』
まずは、この人たちに出会わせてくれたことに、感謝したい。大切な存在に巡り合わせてくれたことを、心から。
『お兄ちゃん、がんばって!』
『ますたー、ここの公式が間違っていますよ。解説をしっかり読まないと……わわ、頭から湯気がー!』
『にゃぁー!?』
そして、次に殴りとばしてやる。俺はわがままなんだ。それが運命だったのだとしても、俺の大切なものを奪いに来るのなら、全力で抵抗してやる。それこそ、運命が自分から呆れて、匙を投げ出したくなるぐらいに足掻きまくってやる。そう、決めたんだ。
だから、諦めてたまるか。こんなところで死んでたまるか。死なせてたまるか。死神をとりあえず一発ぶん殴るのは確定しているけど、そんなのずっとずっと先のことなんだ。
だから、俺はただ前を向く。運命にだって抗うんだろ。後悔している暇があるのなら、これ以上の後悔を積み重ねないように動くしかないんだ! 走れ、走ってくれ! 届いてくれェ!!
俺は気づくべきだった。運命に立ち向かう、物語に立ち向かうよりも前に、俺が立ち向かわなければならなかったものを。それに気付いたのが、よりにもよって今だった。いや、今だったからこそ、気付けたのかもしれない。
「死」という、終わりをすぐに感じることのできるこの瞬間だったからこそ。
『死にたくない』
また俺の中に響く声に歯噛み
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