第1話 広島県
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───あの子、元気にしてるかなぁ〜
ふと、俺の初恋で現在進行形で好きな女の子の顔が脳内に浮かんできた。
何事にも一生懸命で誰にでも優しく、実は天然な彼女。
彼女の作るお菓子は奇想天外なものばかりで、それを彼女は『自信作』と言って俺に食べさせてくる。そして大抵帰宅してから倒れるのが日常茶飯事だった。
それでも、
『今日も私の作ったお菓子食べてくれて、ありがとう!』
そう嬉しそうに笑う笑顔が───俺は好きなんだ。
「ねぇ拓斗くんも行こうよ!」
「え、あぁ。わかった」
「でも拓斗もここに住んでおったことあるじゃけぇ無理して連れていかんでも...拓斗には拓斗の用事があるんだし......」
やはり空気を読める青人は枝葉の腕を掴んで引きはがす。
青人の彼女の割には扱いが雑なようなやり取り。そんなところに疑問を感じながらも俺は、自転車を引いて歩き出す青人の隣を歩く枝葉の隣に位置付けて歩を進める。
「そういえば拓斗くんはどこから引っ越して来たの?」
「俺は東京からだ。小学生のころまでここに住んでたんだ」
「そうなんだ!実は私も東京から今日来たばっかりなんだ!同じだね〜!!」
東京からでしかも来た日も同じだとか、妙な縁だよな......
近場のコンビニかスーパーで買い物しようという目的を枝葉の『一緒に行こう』という誘いに思わず乗ってしまい、こうして三人肩を並べて高校へ向かっている。
高校といっても庄原市に住む学生の数が昔から少ない影響で、少し離れた市の”分校”として建設されている。
学校において本校と分離して設けられる教育施設、と定義されているらしいけど大学が○○キャンパスと学部学科ごとに分かれて設置されたり、高校でも○○校舎と呼ばれているケースも増加している。
”分校”となるにはこれらとは全然違う理由で建設されているため、分校=田舎と捉えられるのも無理はない。
「どうしてその....枝葉さんは東京からわざわざ広島に?俺が言える義理じゃないけどさ」
「え?」
「あ、それ俺も聞こうと思ったんよ。お前なんでこの町に来ようと思ったん?拓斗はともかくさ、父の故郷だからっていう理由で、思い付きじゃできんじゃろ。東京からこんな田舎に進学するなんて」
「.......」
青人はまるで最近知り合ったばかりのような質問をしてくる。
...って待てよ?青人と枝葉って知り合ったばかりなのか?俺はてっきり付き合ってるものだとばかり思ってたからそういう目でこいつ等を見てたよ。
でもなんで知り合って間もない二人が自転車
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