第十話 弱さその十四
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「とても」
「そうよね」
「けれど今はね」
「六割ね」
「女の子になっていくことに」
「怖いわよね」
「怖いよ、だってずっと男の子だったから」
生まれた時からだ、自分はそうだと思っていた。それでそのことについては何があっても変わらないと何となくにしろ思っていた。
しかしだ、それが急に変わるのだ。それを告げられればだった。
「嘘、って思ったよ」
「姉さんの言うことでもね」
「まさかって。けれど」
「少しずつなのね」
「受け入れられてきたよ」
女になるというその現実をだ。
「それにね」
「それに?」
「姉さん言ってくれたよね、僕がどうなっても姉さんは姉さんだって」
「そうよ」
その返事をだ、優子はここでも告げた。
「私もそのことがわかるまでに時間がかかったわ」
「それでね」
「あなたもなのね」
「受け入れられる様になったんだ」
「私が姉さんなのは同じっていうことが」
「姉さんは姉さんで」
そして、というのだ。
「僕は僕だね」
「ええ、優花は優花よ」
「女の子になってもね」
「そうよ」
「そして龍馬も」
最後にだ、優花は彼のことを思い出して言った。
「龍馬だね」
「あの子もね」
「例え何があっても」
「そうよ」
優子は優花のその問いにも微笑んで返した。
「あの子もね」
「うん、僕もうすぐ出来る様になるよ」
本当に微かに、ごくわずかにであったが。優花は笑ってだった。
そしてだ、こう言ったのだった。
「龍馬を完全に信じることもね」
「決めることと一緒に」
「うん、出来るよ」
「その時を待ってるわよ」
「楽しみなのかな」
「その時は一緒に飲みましょう」
こうも言ったのだった、優子は。
そのうえで二人で夕食を食べた、そうしてだった。後は普通の日常の会話と時間を楽しんだのだった。
第十話 完
2016・2・22
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