第九話「無慈悲な真実」
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「たった一つ...そんな事でよくも届ける気になったものね。少しばかり人を舐めているんじゃない?」
リオンは言った。少なくともプレシアにはそう見えた。
「二つ取ったはずなんだがな...どうやら置いて来てしまったらしい。」
一瞬だけ見せた動揺はどこい消えたのか、プレシアには少なくとも彼が悪びれた様子もなくしゃあしゃあと言っているように見えた。ほぼ反射的にリオンに向けて一筋の雷撃を放った。空気が漕げた臭いが部屋に充満した。
あっさりと避けられたのを見てプレシアは彼にも聞こえるように舌打ちをした。当てる気だということを知らせるためだが彼にたいしては威嚇力は全くないのだろう。フェイトはこういう風に力で押さえつける事ができたがこの男にはその手がまるで通用しない。当然だろう、彼は不遜な事にも大魔道士プレシア・テスタロッサを恐れていないのだから。その考えに至って苦い気分になるのは彼と話すと常にあることだった。だからプレシアはリオンが彼女の事を嫌っているように彼女もまたリオンが嫌いだった。
「一つでもジュエルシードを持ってきたからには歓迎されると思ったんだがな...がお気に召さなかったようだ。残念なことに。」
「いや、気に入ったわよ。貴方の腐った性根がね。だから報酬をくれてやったんじゃない。」
フン、とリオンは鼻を鳴らした。勿論彼は雷撃を報酬として望むような悪趣味は持ち合わせていない。今のは完全に予想していたとは言えども不愉快にはなる。
二発目がこない事を確認して憮然とした顔のまま部屋を出て行った。
それを確認したプレシアは服の袖を口につけた。含んでいた鉄の味のするどろっとした液体を袖につけた。そして少し溜息をついた。
その液体はリオンには見えなかった筈だった。プレシアは不治の病に蝕まれていた。本来はもう魔法など使ってはいけない体だった。だから普通に頭の良い人間ならばあそこで雷撃は放たない。打ったところで一見何の利益もないからだ。
だがそれでも敢えてそれを撃ったのはプレシアが天才であることの証明だった。彼女は自分が他者からどう見えているかを完全に心得ていた。リオンはきっとあそこで雷撃が来ることを計算していただろう。彼のようにただ腕が立つだけでなく頭の回る人間に不信感を与えるわけにはいかなかった。
その彼が部屋から出て行ったプレシアはホッとして誰の目も気にすることなく血を吐いた。
「コホッ...ゲホッ...」
その想像を絶する苦しみも全て娘との時間を思えば安い代償だった。
だが実際の所、天才もミスを一つしていた。彼は自分たちの事情など興味も持たないんじゃないかと思っていた。
だがこればかりは彼女でもどうする事もできなかっただろう。彼女はリオンの余りにも凄
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