第二十九話 お墓地でその二
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「ここに教祖の現身があるですね」
「そうよ」
「そうなんですか。それにしても」
阿波野君は周囲を見回して言います。
「ここって何か」
「どうしたの?」
「いえ、凄い景色がいいですよね」
阿波野君は今いる場所から右手を見ていました。丁度山を登ったって辺りで下は白く舗装されています。その舗装された階段が上に続いています。そこから教祖のお墓地に行くんです。
「ここって」
「そうね。いい場所でしょ」
「はい」
そこから神殿やおぢばが見渡せます。本当に景色がいいんです。
「ここはね。だから私も好きなのよ」
「そうなんですか」
「けれどもっといい場所があるわよ」
そして今度はこう教えてあげました。
「もっとね」
「それは何処ですか?」
「その前にまずお参りしましょう」
こう阿波野君に提案しました。
「その前にね」
「その前にですか」
「ええ。話はそれからよ」
阿波野君に言いました。
「それから。いいわね」
「わかりました。それじゃあ」
二人で教祖のお墓地の前まで行って参拝してそれから阿波野君に声をかけました。
「後ろ、見てみて」
「後ろですか」
「そう、後ろよ」
こう言って振り向かせます。するとそこには。
「あっ・・・・・・」
「どうかしら」
「何か。凄いですね」
後ろに見えるその風景を見ての阿波野君の言葉でした。
「おぢばが全部見渡せますね」
「だからここになったのよ」
「お墓地がなんですね」
「ええ。教祖の御身体はここにあるのよ」
このことも阿波野君に教えます。
「ここにね」
「そうですか。何か」
「いいと思うのね」
「はい、そうです」
私の言葉にこくりと頷いて答えてきました。
「こんなになんて」
「それでね」
その阿波野君にまた声をかけます。
「今度はね」
「何処に行くんですか?」
「隣の。善兵衛様や秀司様のお墓にお参りしましょう」
「ああ、あそこですね」
ふと下を見た阿波野君です。
「あそこにですね」
「そうよ。私ね」
私は少し自分のことを言いました。
「こかん様が好きなのよ」
「教祖物語にも出て来ますよね」
おぢばで売っている漫画です。五巻出ていて全部合わさったデラックス版もあります。天理教のことを勉強するにはとてもいい漫画です。
「それで出ておられる」
「秀司様も出ておられるのは」
「はい、読みました」
考えてみるとまだ五月にもなっていないのにそこまで勉強しているなんて。高校から入ったのにかなり凄いことだと思いました。口には出して言いませんけれど。
「僕は秀司様が好きですね」
「そうなの」
「真面目で凄く一途で」
それはこかん様についても言えます。
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