第二十九話 お墓地でその一
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お墓地で
お墓地にはまず入り口があります。ここは駐車場みたいに下は砂です。
「ああ、ここから上にあがるんですね」
「ええ、そうなのよ」
阿波野君に対して答えます。前に上に行く坂道が見えていて墓石も並んでいます。周りは緑の木々が生い茂っていてとても目に優しいです。
「ここからね」
「へえ、山がお墓地になっているんですね」
阿波野君はあらためてこのことを言いました。
「何だかそれって」
「おかしい?」
「いえ。高野山みたいだなって」
こう言うのでした。
「そんな感じかなあ、って」
「高野山ね」
この言葉ははじめて聞きました。
「そうなの」
「高野山行かれたことないんですか」
「和歌山は白浜しか行ったことないの」
「ああ、うつぼの」
ここで随分とマニアックなことを話に出してきました。
「うつぼ美味しいですよね」
「うつぼって食べられるの?」
「これが結構いけるんですよ」
砂利の場所を進みながら私に説明してきました。
「実は」
「ふうん、そうなの」
「何なら家に干物がありますけれど」
「別にそれはいいわ」
特に食べたいとは思いませんでした。鰻とか穴子は好きですけれどうつぼになるとどうも。食べるものだっていう意識が持てませんです。
「そこまでしてもらわなくても」
「そうなんですか」
「とにかくね。こっちよ」
話を一旦終わらせて阿波野君を案内することにしました。
「まずは教祖のお墓地にね」
「あれっ!?」
今の私の言葉を聞いて不意に声をあげる阿波野君でした。
「教祖のお墓地ですか?」
「それがどうかしたの?」
「教祖って確か」
ここでおみちについてかなり大切なことを言ってきました。
「あれですよね。神殿の教祖殿に」
「そうよ。今もおられるのよ」
「だったらどうして」
そのことを私に対して尋ねてきました。
「お墓地があるんですか?」
「実はね。教祖はお墓地はいらないって言われたの」
今回はかなり真面目な話になりました。上に昇りながら話をしていきます。
「教祖御自身はね」
「だったらどうして」
「残った方々のお気持ちなの」
このことを教えてあげました。
「残った方々のね」
「残った、ですか」
「そうよ。残った方々がやっぱり現身はちゃんと埋葬したいって思われてね」
「それでなんですか」
「そうなの。お墓地ができたの」
こう阿波野君に説明しました。
「ここにね」
「成程」
そしてここで左手を見ました。あと少しあがったところでその教祖のお墓地です。皆さんここにお参りします。私達から見て右手に小屋があるのは見回りの方の休憩所で左手には教祖と一緒に過ごされた家族の方々のお墓地です。教祖
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