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真田十勇士
巻ノ四十二 大谷吉継その五

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「大谷吉継殿ですな」
「左様です」
「やはりあの方ですか」
「はい、そしてですが」
「その大谷殿とですな」
「お会いされますか」
「はい」
 一言でだ、幸村は兼続に答えた。
「喜んで」
「それでは」
「はい、そうさせて頂きます」
 こう答えてだった、そしてだった。
 幸村は今度は大谷吉継と会うことになった、ここでもだった。
 兼続は十勇士達にもだ、こう言った。
「それでは貴殿達も」
「この度もですか」
「我等もですな」
「殿と共にですな」
「その大谷殿とですな」
「お会いして頂けますか」
 その十勇士達への言葉だ。
「宜しいでしょうか」
「はい、それでは」
「大谷殿さえ宜しければ」
「その様に」
「はい、お願いします」
 こうして十勇士達もだった、大谷吉継と会うことになった。その話がまとまってからだった。
 幸村は十勇士達と共に大谷吉継と会う部屋に入った、そこにも兼続が同席していた。そしてその場にだ。
 丸い温和な顔立ちだがその発する気はかなり強い、その者がだ。
 部屋に入って来てだ、まずは幸村達に深々と頭を下げた。無論幸村達も応じた。
 それからだ、こう名乗ったのだった。
「大谷吉継です」
「貴殿がですな」
「はい、真田幸村殿ですな」
「左様です」
 その通りだとだ、幸村も答えた。
「それがしがです」
「そうですな、噂通り」
 その幸村の顔を見てだ、大谷は言った。
「よいお顔ですな」
「それがしの顔が」
「はい」
 はっきりとした返事だった。
「これ以上はないまでに」
「だといいですが」
「話は佐吉から聞いております」
 石田の名もここで出した。
「非常に立派な方だと」
「石田殿からですか」
「早馬で」
「文をですか」
「受けていました、それで聞いていましたが」
「それで、ですか」
「はい、あの者は嘘を言いませぬが」
 石田のことを知っている言葉だった、誰よりも。
「しかし文から聞いた以上ですな」
「それがしは」
「顔の相、そして気が違います」
 幸村の身体から放たれるそれまでもというのだ。
「まさに」
「そうしたものも」
「全く違います」
 常人とは、というのだ。
「これはまさに天下の方、これでは」
「これではとは」
「必ず天下に名を残されます」
 間違いなく、というのだ。
「そしてです」
「そのうえで、ですか」
「大きなことを為されますな」
「それは何処においてでしょうか」
 幸村は大谷にあえて問うた。
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