第五章
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はそんなこと知らない。
当然、女であることを隠している理由も。
そして、知らない理由を、誤解を解くために反論しても無意味だ。
何故なら、襲名失敗と身体の事を隠していたのは事実であるし、反論したところで、大多数の人間に通じるほど信頼があるわけでもない。
そして、私の身体の事実を知らされた人々の反応を私は知っている。
殆どは知った後、避けられたり、変な気遣いを受ける。
ユーキはかなり例外的な――いきなりの婚約をふっかけてきたけど。
隠し事をしたまま人々を扇動しようとしているとやられてしまった。
相手は、甘言と逃げ場を与えてくる。
『――全てを白紙にして行こうじゃないか、なあ? そのためにも、今回の件について撤回し、厄介なことは無しにしようじゃないか、なあ? おい』
声が聞こえる。
『さあ、どうする? 武蔵の代表、本多・正純。平和の為の答えを――』
くれ、と言葉が続くだろう。
そのはずだった。
●
「おい、セージュン!」
いきなりの葵の声に正純ははっとして顔を上げた。
空にはインノケンティウスの顔を映した無数の表示枠があり、武蔵の人々が大勢集まってこちらを見上げている。
「おいおい、セージュン! マジで女なのかよ?」
「……は?」
待て。ちょっと、待て。
……生徒会選挙のときに情報が行ってないのか? それに、葵兄のユーキから聞いていない?
葵の顔を見る限り、情報は見ていないらしい。
そして、葵はこちらに対し一つ指を立てた。
彼は笑顔を止めて、真剣な顔で言った。
「ハイ、確認でーす!」
「え? あ、ちょっと――」
何をするか、薄々予測はできている。胸を防御。
が、今回の葵は違った。
「ハイ、チェックーー!」
いきなりこちらのズボンを掴んで、足首まで引きずり下ろしたのだ。
「あ、インナーのパンツは紐式の女物じゃん。あまり売ってないんだよな、下だけの」
下にいる者達の、どけ! どけ! 見えないというジェスチャーが見える。
はて、今の状況を冷静に、客観的に見よう。
……ズボンが降ろされて、下着が丸見え。
「ちょ、お前! おい、こら!」
「ターーッチ! 無いぞ! ナッシング!」
近くにいたユーキが、思い切り後ろから、下着に触れて叫んでいた。
「や、あっ!」
葵は葵で、皆に振り向いて、ぐるりと見回して、
「チョォーーオ女ぁあーーー!」
おおお! 誰もが、声を上げた。
私は無視して、ズボンを引き上げる。
無防備になったその胸に、手が重なる。
直に触っている手は、ユーキのもので、その手の上に葵の手があった。
「ナイス貧乳……
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