第五章
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いうのを言ったよなあ?』
「ええ、言いました」
『ええ、ではなく、Jud.だろう? 審判される側の民よ』
「(挑発を無視できないタイプだぜ。そりゃそうだ。あっちは見本にならなきゃいけない立場だからな)」
あちらに聞こえないように耳打ちしてくるのは良いが、今はやめて欲しい。
『……三河の姫は事件に対して無関係だから解放しろか。なかなか良い意見だ。そう、なかなか本当に良い意見だ。久しぶりに聞いた。そんな、今までに何千何万回と繰り返されてきた助命の嘆願を久しぶりに聞いた』
●
インノケンティウスは思う。
聖譜記述に従い、歴史の再現は進んでいる。だが、齟齬は必ず生じる。
……我々が百年先の未来を見られたとしても、かつての神々の時代に対しての知識や想像、人や物資が足りず、そして過酷な環境や故意による障害があるわけだ。
ゆえに、誤差の消去が必要になってくる。
『では無関係な姫、ホライゾン・アリアダストの自害は誤差の消去のためですか?』
「じゃあ、お前達は、誤差の存在を許すんだな?」
問いかける。
……副会長は知っているが、その横にいるのは確か一般生徒で、不可能男《インポッシブル》の兄だったか。
先程から何かしら副会長に耳打ちをしているのが気になる。
それなりに出来る様だが……。
問いの答えがない。
誤差を許すかどうかの問いに答えない。
もし、誤差を許すと言ったなら極東の教導院は聖譜記述の歴史再現を無視するものとして、それなりの対処をするはずだったのだが。
……成程、武蔵の副会長は自分に酔っているだけの人間ではない、ということか。
「話をしよう。世界はどうあるべきかの話をなあ」
●
周囲は静かである。
人々は表示枠《サインフレーム》に映る相手、教皇総長インノケンティウスを見ているのだ。
『歴史再現における誤差は文明や文化の利便性において生じやすい。誰だって便利な方があればその方法をやりたくなる。だから聖譜記述の歴史再現には解釈という考えがつきものになる』
「しかし、解釈とは都合が良いことじゃあないって言いたいんだろう?」
正純は、いきなり葵・ユーキがインノケンティウスに話しかけたのに驚いた。
……黙っていると思ったのだがな。
『……その通りだ。国の責任を取るために君主が自害する。それがこの時代の極東のルールだ。歴史としてあるべきこと、歴史的に正しい解釈を用いて何が悪いと?』
私達は自害の引責というあるべきルールを無視して、その言い訳として解釈という言葉を用いようとしていると相手は思っているわけだ。
「じゃ、正純。後は任せたわ」
「は?」
「いや、俺が何言っても、意味ねーし。ここで何とか出来る権限持ってんのも、正純だし
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