第五章
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本多・正純は身に染みて感じていた。
……葵・ユーキは本当に色々と知っている。
武蔵の重力制御航法など、かなり深いところまで知っていた。
正直な所、副会長でもいい気がしていたが……。
一般生徒である。
武蔵の一般生徒だ。
……よそう、それは今考えることではない。
「兄ちゃん、ちょっと待てよ」
そういって、葵・トーリがカンニングペーパーを幾枚か取り出していた。
「ええと、どれだ? うん。戦争をしなくてもその選択によって死者は出るってことだよな?」
「Jud.、その通りだ。開戦的状況を前にして、戦争をしなければ平和だというのは、未来に目をつぶった言い訳だ」
私が言う。
葵・ユーキは私の立場や考えを汲み取ってフォローをくれるが、本来は私が言わなければいけないことだ。
「じゃあ聞くぜ。ホライゾンを救わなければ、支配は進んで戦わなくても死者がでる。でも救いに行っても戦争になる。選択は二つだ。緩やかな支配に向かうか、逆らって自由か支配かを勝負してみるか。だったら――」
葵・トーリが新しいカンニングペーパーを取り出して告げる。
「政治家! 正信君の質問です! もし、姫ホライゾンを救いに行くならば、条約違反などと言われる主権問題でなく、聖連に対して正当に提示出来る大義名分を提示して貰いたい。姫を救いに行く正義の理由。彼女を自害させる聖連が悪だと示す理由は何だ?」
正純は、父親の問いを理解する。
……正義か。確かに今まで極東側の立場でものを言い続けてきたわけだ。聖連側に意見を通すなら、聖連側を糾すという姿勢が必要だ。
聖連側のしていることは間違っていると、そう思える意見を提示出来るなら、全面戦争の回避が可能だろう。
……しかし、そのような正義があるのだろうか。
葵・トーリの言葉は続く。
「戦争を始めてしまえば、両者が講和するまで、それを続けることになる。言い換えるならどちらかが、全滅するまで戦い続けることだって出来る。その際に、各居留地は間違いなく人質に取られるだろう。更には、姫の自害はこの時代の君主として当然のこと。それを差し止めれば、各国からの非難は避けられない」
その可能性は高い。
正純はそれを理解出来ている。
……葵・ユーキはどうだろうな。
「姫を救うことに対し、聖連側も納得出来る正義を提示出来なければ全てが敵に回る、あるのか? 姫を救う大義名分――正義の言葉が」
それは……。
葵・トーリは口調を父のものとして、言う。
「未熟なお前に、それが言えるのか」
葵・トーリの叫びに正純は身を震わせた。
親に怒られる子供の様に。
その身はすくみ、息を詰める。
そして、一瞬だけ力が抜ける。
身構えるよ
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