第十一幕その七
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「食べることに困らないんだ」
「そうだよね」
「さっきも言ったけれど僕お肉やお魚は食べられないんだ」
「菜食主義かな」
「人間で言ったらそうなるね」
実際にというのです。
「僕はね」
「確か熊は雑食だよね」
「けれど熊によってね」
そこはというのです。
「食べものの好き嫌いがあってね」
「君はなんだね」
「そうなんだ、お肉やお魚は食べられないんだ」
「どうしてもだね」
「そうなんだよね、ただね」
「うん、君が菜食主義でもね」
ここで先生もウルに言いました。シホレさんはそのウルの横にいて彼を気遣う様にしてみんなと一緒に歩いています。
「そのことを皆は知らないから」
「人に近寄ったら駄目なんだね」
「君が人を襲うと思うからね」
「そうシホレさんにも言われてるよ」
シホレさんを見ての言葉です。
「僕が人を襲うって思われてるからって」
「そう、ましてやこの北海道は」
シホレさんは心から心配するお顔でウルに言います。
「あのお話があるから」
「羆嵐だね」
「そのことがあるから」
「僕みたいな大きな熊は特に」
「怖がられるのよ」
「そして撃たれるんだね」
「猟師が来てね」
野生の生きものにとっては一番怖い人達がです。
「そうなるわよ」
「そうだよね、じゃあね」
「わかるわね」
「うん、よくね」
ウルも怯えるお顔でシホレさんに答えました。
「そのことはわかるよ」
「それならよ」
「人にはだね」
「近寄らないことよ」
「僕何もしないのにね」
「人はそうは思わないの」
ウルがどう考えていてもというのです。
「ウルのことを怖い熊だって思うのよ」
「身体が大きいだけでなんだね」
「そうよ、それだけで力が強いっていうことだから」
「実際に力はあるよね」
トミーはウルにそのことを聞きました。
「ウルは」
「うん、確かにね」
「そうだよね」
「木とかちょっと力を入れて押したらね」
それだけでというのです。
「倒れるから」
「相当に太くて大きい木でもだね」
「そうなるしね」
「立派な体格だしね」
ただ身体が大きいだけでなくというのです。
「余計にだよ」
「僕は力が強いんだね」
「そのこともあってだよ」
「僕は警戒されるんだね」
「人にはね」
「熊はそうしたことは大変だね」
トミーの言葉を聞いてでした、ウルは項垂れて悲しいお顔になりました。
「そんなつもりなくても怖がられるのね」
「人にはどうしても先入観があるからね」
ここでこう言ったのは老馬でした。
「僕も馬だからどうこうって言われることあるよ」
「僕だと食いしん坊だよ」
ダブダブも言います。
「確かにそうだけれどね」
「僕はチーズとかお豆が好きでね}
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