第三部
名誉と誇り
にじゅうに
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。
だが、どう好意的に見積もっても、碌なことにならないことだけは分かっていた。
それはいままで、私たち種族が関与して、幸福を得たものがいないからに他ならない。
未発達な文明に対して、我々の技術を渡し、繁栄していった文明もないわけではない。
しかし、それすらも一時的なものに過ぎず、結果的に運良くそうなっただけのことであり、我々種族は都合良く目的を達成するためにその過程で流された痛みになど頓着するようなことはない。結局は自分達にとって、都合良く狩りを行うことができる土壌を整えることに心血を注ぐ、種族単位で自己中心的なだけある。
なんか、物凄く申し訳ない気持ちになってきた……。
「あれか、土下座でもすれば許してくれるってか」
「なんの話ですか!?」
私は何を血迷ったことを口走ったのだろうか。
「いや、なんでもない。忘れてくれ」
「は、はあ?」
「……それよりも、だ。どうするつもりだ?」
無理矢理に話を戻した私の言葉に、彼女は一度顔を伏せて思案する。
「少し間を空けて、それから王都へ戻ってみようかと思います」
「それに意味はあるのか?」
「それは……分かりません」
ふむ。
最善とは言えないが、決して悪い判断ではないか。
この場で直ぐに私達が行動したとしても、相手の正体と規模、その目的が不明ないまはどうすることも出来ない。
私がこのまま王都へ同行していくという手もあるにはあるが、無策な状況で2人揃って相手のテリトリーに飛び込むリスクは計り知れない。
私の同族がいる、あるいは何かしらの形で技術提供をしているのは確定的である。
そうなれば、私の持つ技術的なアドバンテージはかなり薄れてしまう。しかも、少なくとも相手はこの国の中核に食い込んでいる可能性すらあるのだから、それを隠れ蓑に何の後ろ楯も持たない私を一蹴しようともするだろう。
「……あの男、総隊長と言ったか。ヤツはこの国でどれ程の権力を持っていたか分かるか?」
「彼の名はフレデリック・バーン・スタインと言って、スタイン子爵領の当主になります」
「あの若さでか?」
「総隊長……スタイン子爵の前当主とその奥様は、3年前に流行り病で亡くなっています。その頃、既にスタイン子爵は騎士団の総隊長を務めてましたから、基本領地経営は文官に任せていたはずです。それでも悪い噂は聞いたことはありませんし、それも合わせて中央からの覚えも良かったと思います」
なるほど。
場合にもよるが、子爵と言えば下級の爵位で、男爵の上にあったと記憶している。
しかし、この3年の間に領地経営も問題なく行い、かつ騎士団を率いていたともなれば、上からの覚えが良かったのも納得だ。
となると、スタインを懐柔したのはそれよりも上の立
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