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もう一人の八神
新暦76年
memory:07 どっちが強いの?
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ぱ悠は強ェな。一筋縄じゃいかねえ」

笑み。

その顔に浮かぶのは悔しさでも妬みでもない。

この試合を心から楽しんでいるという歓喜。

「誉め言葉ありがと。今のはかなり効いた。ああ、こんなに楽しいのはいつ振りだ?」

普段浮かべることのない好戦的な笑みを浮かべながら戻ってきた。

「今度はこっちから行くよ」

地を滑るような闊歩で距離を詰める。

「くッ!」

防がれようとお構い無しに連撃を繰り出す悠莉。
そのすべてが重く鋭いもので、防御の上からであってもダメージを蓄積させえる。

しかし、数を重ねる度に体の振りがわずかながら大きくなっていっている。

「これでッ!」

悠莉右拳を振るう。
だが大振りになってしまったためにワンテンポ遅れた。

その隙をライは見逃すはずもなく、

「ハアッ!」

右拳を弾いて反撃に転じる。

狙うはがら空きのボディ。

そこに技を打ち込もうとした瞬間、悠莉の口が吊り上った。
とっさに動作を中断し距離を取ろうとするも間に合わず、それに触れてしまった。

「なんだこれはッ!?」

シールドからチェーンが伸び、ライを絡み付けた。

「捕縛盾捕縛確認完了!」

この時ライは理解してしまった。
先ほどまでの大振りというスキは悠莉が態と作っていたのだと。
今、この状況を作り出すための罠だったのだと。

「さて、さっきの仕返しといこうか!」

気づけば悠莉は距離を取っており、その手には一本の日本刀が握られている。

「―――抜刀!」

悠莉の持つ刀に線が走り、魔力が収束し始める。

「(おいおいおい、なんだよこの魔力量に圧縮率! 半端ねえぞ!)」

目の前の光景に先ほど以上に冷や汗を流すライ。
しかし、笑みが剥がれることはなく、それ以上にこの状況を楽しんでいた。

「なのはさん直伝の捕縛盾だ。そう簡単には外れん。だから……これで終わりだ!」

「かもな。だけど、最後まで足掻かしてもう! 炎龍!!」

ライの背後に現れたのは炎で形成された双龍。
それは魔力を高めるライに呼応するかのようにとぐろを巻く。

「さながら龍退治と言ったところか……面白い!」

「行くぜ!」

双龍が牙を剥き、悠莉に襲いかかる。

「覇道、滅封!」

抜刀の瞬間、剣戟から衝撃波が地を走る。

「そら、もう一丁!」

二本の衝撃波と双龍が互いを相殺させる。
衝突による爆風が起こるが中で悠莉の声は凛と響いた。

「―――単撃・瞬夢」

気づけばライの少し後ろで背を向け、刀を抜いた悠莉の姿があった。
そして納刀すると同時にライはその場で崩れ落ちた。

「そこまで! 勝者、ユーリ!」

-sid
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